人質解放での合意を歓迎するイスラエルの市民(9日)=ロイター

【イスタンブール=渡辺夏奈、ワシントン=坂口幸裕】イスラエル政府は10日、閣議でパレスチナ自治区ガザの停戦を承認した。同国首相府は閣議後24時間以内に停戦が発効し、残る人質48人は週明けをメドに解放されると説明している。

イスラエルメディアが伝えた。停戦を仲介したトランプ米大統領は9日、協議が開かれたエジプトで改めて調印式を実施すると明らかにした。

イスラエルとイスラム組織ハマスはトランプ氏が示したガザ和平案の「第1段階」で合意した。両者はガザでの戦闘を停止し、ハマスが人質全員を解放する。交換条件としてイスラエルはパレスチナ人囚人ら約2000人を引き渡す。

和平案を巡っては事前にイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ氏が合意した。ハマスの承諾を取り付けて合意を既成事実化した後に、ネタニヤフ氏は実現に必要な政府内での手続きを進めた格好だ。イスラエルで連立に参加する極右勢力は停戦に反対すると示唆していた。

和平案は合意後72時間以内に人質を解放すると定めている。トランプ氏は9日、ハマスが拘束する人質解放について13日か14日になるとの見通しを示した。「人質解放は複雑なプロセスだ」と強調した。イスラエル軍は9日、人質の解放に備えてガザから一部撤退する準備を始めた。

トランプ氏は12日に中東に向かうとも明らかにした。「エジプトが追加の調印式を実施するだろう。我々は正式な署名をするつもりだ」と述べた。既に自身の代理で署名を終えているが、改めて式典を開くという。

トランプ氏はエジプトのほか、イスラエルを訪問する可能性に言及している。ネタニヤフ氏はトランプ氏をイスラエル国会での演説に招いており、トランプ氏はこれを受けると話している。

停戦により人道支援の拡大に期待が集まる。和平案はガザに合意後「直ちに全面的な支援を送る」と記す。水道や電気といったインフラのほか、戦闘で被害を受けた病院などの復旧に必要な機材も搬入するとしていた。

ガザ支援で中心的な役割を担ってきた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリニ事務局長は9日、同機関がガザの全人口に3カ月分もの食料を準備していると訴え、イスラエルに搬入を認めるよう求めた。

人質解放後も停戦が続くのか疑問視する見方もある。イスラエル国内ではガザが再び脅威となることを防ぐため、ガザを厳しい軍事管理下に置くべきだとの考えが根強い。

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