
【ニューヨーク=西邨紘子】トランプ米政権が停止している大学への助成金の再開を巡り、米ハーバード大と政権が和解に向けた協議を再開したことが9日、明らかになった。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が報じた。長期化するとハーバードは人員削減や研究縮小を余儀なくされることから、仲裁人を入れ、落とし所を探る。
ウォール街から異例の交渉担当者
NYTによるとトランプ氏と親しい米投資ファンド・ブラックストーンの共同創立者、スティーブン・シュワルツマン氏が大学側の交渉担当者となり、政権と話し合いを進めているという。米メディアによると、シュワルツマン氏はハーバード大ビジネススクールの卒業生。
トランプ大統領は9月30日、同大との和解が「非常に近い」と発言していた。
トランプ政権は「リベラル寄り」と見なす米大学を攻撃してきた。大学にとって長年、重要な研究資金となってきた助成金の差し止めなどで圧力をかけ、政権が進める反DEI(多様性・公平性・包摂性)施策や学生への監視強化の受け入れを迫ってきた。
4月には、ハーバード大にもキャンパスでユダヤ系学生への嫌がらせなど「反ユダヤ主義的な活動」を放置したことなどを理由に20億ドル(約3060億円)を超える助成金差し止め方針を通告した。再開条件として、DEI施策見直しや教職員や学生の監視強化などを求めた。
だが、ハーバード大はこれらの要求が憲法で認められた言論の自由などの権利を侵害するとして受け入れを拒否した。助成金の支払い凍結に踏み切ったトランプ政権を訴え、対立が激化した。
トランプ政権はその後もハーバード大に対し、留学生の受け入れ資格剝奪や大学資格の差し止め、税制上の優遇措置取り上げなどを表明し、様々な方向から圧力をかけてきた。
コロンビア大やブラウン大はすでに和解
ハーバード大の2024年度(24年6月期)財務報告によると、同年に受け取った連邦政府からの研究資金は6億8600万ドルで全体の予算の約1割にのぼる。トランプ氏との対立でハーバード大は教職員削減や研究活動の縮小を迫られていた。
米メディアは8月半ば、ハーバード大が「解決金」として5億ドルを米国の職業訓練プログラムに寄付する条件などで両者が和解間近と伝えた。だが、その後交渉は停滞し、大学自治に関わる内容などを巡り、合意形成が難航していた。
トランプ氏と大学の対立をめぐっては、これまでコロンビア大やブラウン大などが政府が求める条件受け入れで合意した。トランプ政権は今月上旬までに、これらの大学に対し、さらに入学審査や教職員の雇用での反DEIの徹底や保守的な思想・発言の保護を求める「協定」への参加を求める書簡を送付した。
NYTは、ハーバード大内部で和解条件の受け入れ後、さらに政権が要求をエスカレートすることへの懸念が浮上していると伝えている。
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