
イスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザから、生存する人質20人全員を解放した。対するイスラエルもパレスチナ人約2千人を釈放し、軍がガザの一部から撤退した。双方が停戦合意に沿って行動しており、前進を歓迎する。
これはトランプ米大統領が示した20項目の和平計画の「第1段階」にすぎない。難路はこれからだ。両当事者は次の段階の交渉を急ぎ、2年を超す戦闘を終結へと着実に導く必要がある。
イスラエルでは生還した人質と家族が再会に歓喜し、ガザ住民は空爆の恐怖や食糧難の終わりに一筋の希望を見いだした。もう無意味で悲惨な戦闘行為に逆戻りしてはならない。
ハマスは人質の遺体すべてを返還しておらず、イスラエルでは合意違反と非難する声がある。同国のネタニヤフ首相は、人質奪還が軍事力でなく交渉で進んだことを認め、攻撃再開を慎むべきだ。ハマスも時間稼ぎは許されない。
停戦合意を受けてトランプ氏はエジプトで「中東和平サミット」を開き、仲介国のエジプト、カタール、トルコの首脳とともに合意文書に署名した。合意の「第2段階」が始まったとも述べた。
自らの成果を誇る狙いが透けるが、具体的な進め方には言及しなかった。ハマスの武装解除やイスラエル軍の完全撤退は難題で、戦後統治も見通せない。第1段階が順調でもここで交渉が行き詰まり、停戦が破られる恐れがある。
会議に当事者のイスラエルとハマスは不在だった。過去に停戦合意が崩壊した例があり、相互不信は深い。双方に圧力をかけるには米国の関与が欠かせない。
停戦合意を導いたトランプ氏を多くの国が評価している。同氏が関心を失わないよう、国際社会は働きかけを続ける必要がある。
この会議に日本を除く主要7カ国(G7)や中東諸国の首脳が駆けつけた。日本が閣僚の派遣すらしなかったのは残念だ。石破茂首相の退陣表明後、次期政権の枠組みがみえない政治の混迷が、外交舞台での埋没を招くようなことはあってはならない。
ガザでは停戦維持と並び、飢餓など人道危機の解消が急務だ。2年超の戦闘で死者は6万7千人を超え、負傷者は17万人にも達している。住宅や病院の破壊も深刻だ。国連機関への支援やインフラ再建で実績を持つ日本に期待される役割は大きいはずだ。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。