
【ニューヨーク=吉田圭織】14日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比202ドル88セント(0.44%)高の4万6270ドル46セントで引けた。米中対立の激化懸念から朝方は600ドルあまり下げる場面もあった。その後は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が量的引き締め(QT)の終了が近いことを示唆し、一転して買いが広がった。
米中の貿易摩擦をめぐる緊張が高まり、ダウ平均は反落して取引が始まった。中国商務省が14日に韓国の造船大手の米国子会社に制裁を科すと発表した。レアアース輸出規制に続く動きで、ベッセント米財務長官が中国が世界経済に打撃を与えようとしているなどと批判したと報じられたことも、相場の重荷となった。
売り一巡後は急速に下げ渋り、上げに転じる展開となった。材料になったのがFRBのパウエル議長による14日の講演だ。
パウエル氏は米国債などの保有資産を圧縮するQTについて「準備預金が十分と考えられる水準をやや上回る時点で(QTを)停止する計画だとこれまで表明してきた」と指摘した。そのうえで「今後数カ月でその水準に近づく可能性がある」と語った。
14日の米債券市場では長期金利が低下し、株式相場の支えとなった。
パウエル氏は米労働市場について、雇用者数の伸びが急激に減速し「雇用の下振れリスクが高まったようにみえる」と話した。米連邦政府の一部閉鎖で経済指標の発表が遅れているものの、民間データなども踏まえて10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利下げに踏み切る公算が大きいとの見方が広がり、買いを誘った。
米保険大手ネーションワイドのキャシー・ボスジャンチッチ氏はパウエル氏が「労働市場に対する懸念を示唆し、さらなる利下げが実施されるという市場の予想を後押しした」と分析した。米金利先物市場の値動きから米政策金利の先行きを予想する「フェドウオッチ」によると、10月28〜29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率は96.7%に上昇している。
ダウ平均は600ドル安から400ドル超高と一日1000ドル強も乱高下し、値動きの荒い展開が続いた。先行きを巡る市場の強弱感は対立している。
トランプ米大統領は14日午後、自身のSNSに貿易交渉を巡る中国側の姿勢が「悪意ある敵対的な動きだ」と投稿した。米中対立への警戒感はなお強く、市場の不安心理を映す米株の変動性指数(VIX)は不安が高まった状態とされる20を超えて推移している。
個別では、キャタピラーやウォルマートなど大型株が高かった。好決算を発表した銀行株も堅調だった。一方でエヌビディアやセールスフォースといったテック株が軟調だった。
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