最高裁前で投票権法の保護を訴える人たち=AP

【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁は15日、黒人が多数派の選挙区を増やした南部ルイジアナ州の区割りの合憲性を巡り口頭弁論を開いた。多数派を占める保守派判事から、人種を重視した選挙区割りに懐疑的な発言が相次いだ。判断によっては、黒人などマイノリティー(少数人種)が多数派の選挙区が減り、与党・共和党に有利になる可能性がある。

共和が主導するルイジアナ州の州議会は2022年、州人口の約3割を占める黒人の多くを1つの選挙区に押し込める形で区割りを設定した。この区割りは人種差別を禁じた「投票権法」に違反するとした下級審の判断を受けて、州議会は黒人有権者が多数派の選挙区を2つに増やした。

しかし今度は「非黒人」の有権者らがこの新区割りについて、人種によるゲリマンダー(恣意的な区割り)で法の下の平等を保障した憲法に違反すると訴えた。

9人で構成する最高裁は保守派6人、リベラル派3人と保守に大きく傾斜している。

口頭弁論で保守派のカバノー判事は、人種差別を是正する措置は一定期間は許容できるが、無期限であるべきではないとの見解を示唆した。保守派のロバーツ長官も、選挙区割りでの人種の考慮について範囲を定める必要性に言及した。

最高裁は23年に、南部アラバマ州の選挙区割りを巡る同様の訴訟で人種の考慮を認める判断を下していた。この時にはカバノー氏とロバーツ氏がリベラル派と共に判断を支持する側に回った。今回の訴訟で両氏が立場を変えるかどうかがカギになる。

最高裁が選挙区割りでの人種の考慮を大きく制限する判断を下せば、1965年に成立した投票権法の適用が大きく制限されかねない。ルイジアナ州だけでなく、全米で黒人をはじめとするマイノリティー有権者の影響力確保を目的とした選挙区割りが難しくなる。

黒人は伝統的に民主党支持が多い。黒人有権者が多い南部を中心に、共和が最高裁判決を受けて黒人多数派の選挙区を減らす区割りを実施する可能性がある。

最高裁は26年夏までに判断を下す。米メディアによると、早い時期に判断を出せば、26年11月の中間選挙に間に合うように区割りを変更することも可能だという。

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