16日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続落し、終値は前日比301ドル07セント(0.65%)安の4万5952ドル24セントだった。銀行業界の健全性を巡る懸念から金融株全般が売られた。米中貿易の対立も引き続き売りにつながった。株式市場で警戒感が強まったことで安全資産とされる米国債にマネーが向かい、長期金利は半年ぶりの低水準(債券価格は上昇)となった。

ダウ平均の構成銘柄ではないが、地銀のザイオンズ・バンコーポレーションが13.1%安、ウエスタン・アライアンス・バンコープが10.8%安となった。いずれも融資に関する不正行為を巡る訴訟を起こしたことが明らかになった。市場では「銀行にとって重要な信用の質に対する疑念が広がった」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)との見方があった。

信用リスクの高まりへの警戒から銀行株全体に売りが波及し、銀行株で構成される代表的な上場投資信託(ETF)「SPDR・S&P・バンクETF」は5.4%下げた。ダウ平均の構成銘柄では、JPモルガン・チェースやアメリカン・エキスプレスが売られた。

米中関係の悪化を懸念する見方も相場の逆風となった。中国は16日、レアアース(希土類)の輸出規制を巡って米国が「恐怖をあおっている」と批判した。ベッセント米財務長官が15日の記者会見で中国を非難したことに対しても、中国は反発する姿勢を示した。

米政府機関の一部閉鎖は16日も続いた。米連邦議会上院は同日、下院が可決した「つなぎ予算案」を巡って10度目の採決を行ったものの、またも可決には至らなかった。

16日発表の10月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス12.8と前月のプラス23.2から悪化し、プラス9.5を見込んでいた市場予想に反した。市場では、「重要度の低い指標ではあるが、政府閉鎖で主要指標の公表が遅れているなか相場が反応しやすい面があった」(インガルズ・アンド・スナイダーのティモシー・グリスキー氏)との受け止めがあった。

米10年債利回りは16日、一時3.9%台後半と4月初旬以来の低水準となった。16日にはFRBのウォラー理事やミラン理事など投票権をもつ幹部らが相次いで講演した。複数の理事が今月28日〜29日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で再利下げを支持する意向を示したことも、国債価格の下支え材料になった。

朝方はハイテク株が上昇をけん引し、ダウ平均は上げる面があった。個別ではセールスフォースが3.9%高だった。15日に開いた投資家向け説明会で、2030年1月期通期の売上高目標を600億ドル以上にすると発表した。25年1月期から6割ほど増やすことを目指しており、買い材料視された。

半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)が16日に発表した25年7〜9月期決算で売上高などが市場予想を上回った。25年12月期通期の見通しも引き上げ、人工知能(AI)半導体の需要を期待した買いが一部ハイテク株に入った。

その他のダウ平均の個別銘柄では、ビザやナイキが売られた。朝に四半期決算を発表したトラベラーズも下げた。半面、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)やキャタピラー、エヌビディアが買われた。

ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反落した。終値は前日比107.543ポイント(0.47%)安の2万2562.537(速報値)だった。テスラやメタプラットフォームズが売られた。一方、複数アナリストが目標株価を引き上げた半導体メモリーのマイクロン・テクノロジーは買われた。

【NQNニューヨーク=稲場三奈、ニューヨーク=秋田咲】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。