政府閉鎖は20日目に入り、史上3番目の長さとなった(10月、西部カリフォルニア州)=ロイター

【ヒューストン=赤木俊介】1日から続く米政府の一部閉鎖の影響が米航空業界に広がり始めた。米連邦航空局(FAA)の管制司令部は19日、複数の空域で航空管制官が不足していると発表した。閉鎖が長引けば航空や旅行業界にとどまらず、米経済全体へ下向きの圧力をかける恐れがある。

米航空調査データのフライトアウェアによると、18〜19日にかけて米国を発着する計1万3648便が遅延となった。FAAは19日に米南部、中西部、東部など複数の空域で管制官が不足していると発表し、中西部イリノイ州のシカゴ・オヘア空港で人員不足を理由に離陸停止措置を発令した。オヘア空港発の航空便の遅延率は36%だった。

同日はダラス・フォートワース国際空港発の航空便の遅延率も36%、ボストンのローガン国際空港は同26%となった。米南部や東部で悪天候が続いた影響もある。

ギグワークで生活費まかなう管制官も

航空管制官は重要業務とみなされており、連邦政府の予算が失効しても無給勤務が義務付けられている。空港の保安検査を担当する運輸保安庁(TSA)の職員も同様に無給で勤務を続けている。

米国では管制官の不足がかねて指摘されており、1月末に首都ワシントン近郊の空港で発生した空中衝突事故をきっかけにトランプ政権も航空管制の体制強化に乗り出した。FAAは閉鎖中も管制官の採用を続けると説明している。

米運輸省のダフィー長官は20日、米CNBCのインタビューで政府職員の給与支払い日が近づくなか、政府閉鎖の解消に向けて進展がなければ管制官の病欠が増えかねないと述べた。同氏は一部の管制官が料理宅配などギグワークで生活費を賄っていると説明し、政府閉鎖が管制官の生活を圧迫していると強調した。

米航空大手は損失計上の可能性も

政府閉鎖は20日目に入り、史上3番目の長さとなった。35日間と過去最長を記録した2018年12月〜19年1月の閉鎖では最終日に複数の航空管制官が病気などを理由に欠勤し、全米でフライトの遅延につながった。

米デルタ航空のホーエンスタイン社長は9日に開いた25年第3四半期の決算説明会で政府閉鎖の影響は「監視している」としたものの、同日時点で重大な影響はないと述べた。同氏は閉鎖により1日につき100万ドル弱の損失が発生すると説明した。

米ユナイテッド航空のカービー最高経営責任者(CEO)も16日の決算説明会で政府閉鎖が長引くほど消費者心理が落ち込み「米経済へのリスクが広がる」との見解を示した。

米旅行協会の集計では政府閉鎖が始まった1日以降、20億ドル以上もの経済損失が発生している。同協会トップのフリーマン氏は8日、声明で閉鎖が長期化すれば「地域コミュニティや中小企業へのダメージがさらに悪化しかねない」と訴え、予算の成立を求めた。

【関連記事】

  • ・政府閉鎖で連邦裁判所も資金枯渇 トランプ政権巡る訴訟審理に遅れも
  • ・米高官、政府閉鎖中の職員削減「1万人超に」 地裁は差し止め
  • ・トランプ政権「航空遅延は民主党の責任」 全空港に動画放映を要求

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。