米国際開発局(USAID)の解体に象徴される、トランプ米政権による対外援助削減の影響は、想像を超えて広範囲に及んでいます。認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金事務局長の坂元雅行さんは、国際自然保護連合(IUCN)の専門家会議に参加して「アジアゾウの保全活動もトランプ政権の政策の直撃を受けている」と危機感を抱き、Re:Ronに寄稿してくれました。
USAIDによる生物多様性保全関連への援助は、2021年時点で3億1950万ドル(当時のレートで約350億円)。さらに野生生物保全を担う米内務省魚類野生生物局(USFWS)も、個別法に基づく、アジアゾウ保全基金といった様々な野生生物保全への補助金プログラムを凍結したといいます。坂元さんは、アジア・アフリカを中心とした世界の種の保全活動が打撃をうけている、と警鐘を鳴らします。
打開策はあるのでしょうか。欧米の動物園が取り組んでいるように、日本の動物園も、野生動物の生息地への「窓」として現地援助に取り組むべきではないか、と坂元さんは提案します。特にアジアゾウは、戦後日本の平和の象徴として動物園の花形を担ってきました。ゾウの保全は、森林生態系や環境全体を保全することにもつながるといいます。
坂元さんは弁護士でもあります。「私の仕事は、相手の立場に立って考える力が欠かせない」。かつて環境省担当記者だった筆者との交流の中でそう話しました。オオヒシクイ(国の天然記念物)を原告とした、「自然の権利」を巡る裁判を手がけたこともある坂元さん。「相手の立場」で考えるという視点は、今回の寄稿での議論にも通じます。
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