カナダ銀行のマックレム総裁(9月、カナダのオタワ)=ロイター

【ニューヨーク=秋田咲】カナダ銀行(中央銀行)は29日、政策金利である翌日物金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げて2.25%にすると発表した。米政権がカナダ経済にもたらす不確実性などを背景に2会合連続で利下げを決めた。目標とする2%程度のインフレ率定着には現在の金利水準が妥当として利下げの打ち止めを示唆した。

カナダ中銀は米国が課す関税によって輸出や企業投資が低迷しているほか、貿易関連のセクターで雇用者数の減少が続いているとの見方を示した。政策金利は22年7月会合以来で最も低い水準となる。前回の9月会合では4会合ぶりの利下げに踏み切っていた。

カナダの9月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比2.4%とカナダ中銀の予想を上回った。8月の1.9%から上昇した。カナダ中銀は今後数ヶ月の間にインフレ圧力が弱まることでCPIは2%近辺で推移するとの見通しを示している。

カナダ中銀は声明で「現在の政策金利がインフレ率を2%近辺に維持する上でほぼ適切な水準だと考えている」として、利下げの打ち止めを示唆した。「見通しに変化が生じた場合には対応する」とも付け加えた。マックレム総裁は「我々の仕事は低インフレを維持するよう努めることだ」と述べた。

合成麻薬フェンタニルの流入対策が十分ではないとして、米政府はカナダからの輸入品に35%の追加関税を課している。25日にはトランプ米大統領がカナダからの輸入品にさらに10%の追加関税をかけると表明した。カナダ中銀は「自動車、鉄鋼、アルミニウム、木材などの重点セクターに深刻な影響を及ぼしている」と指摘した。

マックレム総裁は同日の記者会見で「カナダと米国の自由貿易は長年両国に利益をもたらしてきた。米国との貿易摩擦が所得減につながっている」と述べた。

同日発表した経済見通しなどを示す金融政策報告書では、2025年と26年の実質国内総生産(GDP)の前年比増減率予測を1月時点から下方修正した。1月と比較して「米国の関税によってカナダのGDPは恒久的に低下する」と説明した。

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