
【フィレンツェ=南毅郎】欧州中央銀行(ECB)は30日、独自の中銀デジタル通貨「デジタルユーロ」を2029年にも発行すると発表した。欧州連合(EU)の法整備を前提に27年から試験運用を始める。実現すれば、日米欧の主要中銀では初のデジタル通貨となる。
デジタルユーロは中銀が発行するデジタル通貨(CBDC)だ。現金と同じようにユーロ圏で誰もが無料で使える決済手段にする。23年11月からシステム構築やルールの検証に着手していた。
ECBはデジタルユーロを通じて「欧州の通貨主権と経済安全保障を守る」と意義を強調した。発行するには欧州議会の審議などを経て、法整備の完了が前提となるものの「法整備ができていないことを認識した上で柔軟に準備を進める」と説明した。
ラガルド総裁も声明で「未来に適応するためユーロ紙幣の再設計と近代化を進める」と述べた。ECBは法整備が26年中に完了するのを前提に、27年には実用化に向けた試験運用を始める。
世界の通貨主権をめぐる競争は、デジタルの領域で激しくなっている。トランプ米政権はCBDCに否定的で、米ドルなど法定通貨に価値が連動する暗号資産(仮想通貨)である「ステーブルコイン」を通じてドル覇権の強化を推進する。
発行済みのステーブルコインはドル建てがほとんどで、ECBは欧州域内への流入に警戒を強める。世界の中銀が参加する国際決済銀行(BIS)はステーブルコインの価値が完全には保証されていないとして、拙速な市場拡大に警鐘を鳴らした。
これまでCBDCはジャマイカやナイジェリアなどの新興国が導入していた。先進国ではECBが意欲を示しており、現金志向が根強いドイツもメルツ政権が前向きだ。日本は政府・日銀が「デジタル円」の制度設計の準備を進めている。
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