カナダのカーニー首相は31日、中国の習近平国家主席と会談した(=ロイター)

【ニューヨーク=秋田咲】カナダのカーニー首相は31日、中国の習近平(シー・ジンピン)中国国家主席と会談した。公式会談は2017年以来。両国関係はカナダによる中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長逮捕や中国によるカナダ人の死刑執行などで悪化していた。両国とも関税交渉を巡って米国との対立が続く中、関係改善を進めたい考えだ。

18年のIT幹部逮捕で関係悪化

韓国南東部・慶州で会談した。共同通信によるとカーニー氏は「失われた時間を取り戻し2国間協力を再開させたい」と話した。カナダ政府は会談後に「両首脳は未解決の貿易問題や摩擦の要因を迅速に解決するよう関係当局に指示した」との声明を公表した。カーニー氏は習氏からの訪中の招待も受け入れる意向を示した。

カナダ政府の声明文によると「両首脳はキャノーラ(菜種)などの農産物や食品、水産物、電気自動車(EV)などに関する敏感な問題について解決策を議論した」という。

両国の関係は18年にファーウェイの副会長をカナダが逮捕したことで一気に冷え込んだ。第1次トランプ政権下で制裁対象だったイランへの違法輸出容疑で拘束するよう要請を受け、カナダが実行した経緯があった。副会長は21年に釈放されたが禍根として残っていた。

今年3月には中国側が麻薬犯罪を理由にカナダと中国の二重国籍者4人に死刑を執行したことが判明し、カナダが強く反発していた。経済分野での対立も深まり、中国はカナダからのキャノーラ油などの輸入品に100%の関税を課した。豚肉や水産品にも25%の関税を発動した。カナダが24年に中国のEVなどに関税を課したことへの報復措置だった。

米関税の損失、対中改善で穴埋めか

カナダが足元で中国に接近する背景には、米国との関税交渉が思うように進展しないなか、中国との関係改善を通じて経済への打撃を和らげたい思惑があるとみられる。

米国は合成麻薬フェンタニルの流入対策が十分ではないとして、カナダからの輸入品に35%の追加関税をかけている。25日にはカナダ側が放送した反関税のテレビ広告を巡ってトランプ米大統領が反発し、さらなる追加関税措置を表明したばかりだ。

「カナダ国民は経済の停滞や貿易協定の進展が見えないことにいら立ち始めている」(カナダのシンクタンク、マクドナルド・ローリエ研究所のジョナサン・ミラー氏)との声がある。

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