海上自衛隊の護衛艦「くまの」に乗り込む小泉進次郎防衛相(中央前から1人目)とインドネシアのシャフリ国防相(同2人目)(17日、神奈川県横須賀市)

小泉進次郎防衛相は17日、来日中のインドネシアのシャフリ国防相と海上自衛隊の横須賀基地(神奈川県)を訪れた。海自が運用する護衛艦と潜水艦をともに視察した。インドネシアに日本製艦艇の特徴を説明し、輸出の実現を探る。

両国は同日、都内で外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を予定する。インドネシアが進める軍の近代化の支援策について議論する。南シナ海で中国と周辺国の緊張が高まる状況を念頭に、地域大国のインドネシアと航行の自由の重要性を確認する。

両防衛相は海自基地で護衛艦「くまの」と潜水艦「じんげい」を視察した。「くまの」は日本がオーストラリアへの輸出を進める新型護衛艦「もがみ」型と同型で、豪州を含め外国との商談の実績がある。

「くまの」では自衛隊員がシャフリ氏に50分ほどかけて特徴などを説明した。プラボウォ大統領の側近で軍人経験のある同氏に直接見せてアピールする狙いがあった。

日本とインドネシアは2021年に防衛装備品・技術移転協定を結んだ。中谷元前防衛相とシャフリ氏が25年1月に開いた防衛相会談装備品や技術面での協力を話し合う実務者協議の立ち上げを決めた。海自の護衛艦の輸出も議題に上がった。17日の両国の防衛相会談でも協議の進展を確認するとみられる。

海上自衛隊の潜水艦「じんげい」の上で説明を受ける小泉進次郎防衛相(右から3人目)とインドネシアのシャフリ国防相(同4人目)(17日、神奈川県横須賀市)

日本は防衛装備品を輸出できる品目を救難や輸送など「5類型」に絞り、殺傷性の高い装備品は輸出できないルールを運用してきた。相手国との共同開発の形式をとれば殺傷能力を持つ装備品も輸出できるものの、仕組みをどうつくるか調整に時間がかかる。豪州への護衛艦の輸出も共同開発の形をとる。

小泉氏は「5類型」の撤廃に意欲を示す。実現すれば、情報管理や技術水準などの観点で共同開発の枠組みを活用しづらい場合も艦艇のような殺傷性のある装備品を輸出しやすくなる。

インドネシアは装備品の近代化に向け輸入を増やしている。米国と欧州が中心だった調達先も多様化してきた。調達の選択肢を増やし費用を抑える狙いがある。

戦闘機を巡っては7月にトルコから「KAAN(カーン)」を48機を調達する契約を結んだ。中国からの「殲(J)10C」の購入も10月に明らかになった。韓国とは11月に次世代戦闘機「KF-21」の共同開発計画の継続を決めた。

フリゲート艦はイタリアから調達するほか、25年に入りフランスやトルコとの交渉も始めた。日本からの護衛艦の輸入については明確な発言を避けてきた。

日本はインドネシアの武器の調達先が中国に偏って影響力が強まりすぎないよう、日本製装備品の売り込みを急ぐ。23年に関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」へ格上げしたことを踏まえ、海上戦力の連携相手として重視する。

インドネシアと中国は南シナ海を巡り摩擦を抱える。中国は南シナ海に「九段線」と呼ぶ独自の境界線を設ける。九段線はインドネシアの排他的経済水域(EEZ)と重なり対立の種となってきた。

自衛隊は米軍などを交えた多国間の共同訓練を通じ、インドネシア軍と部隊レベルで連携も強化する。8月に実施した大規模演習「スーパー・ガルーダ・シールド」では敵に占領された島を奪還する訓練などに取り組んだ。

(尾方亮太、ジャカルタ=押切智義)

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