台湾有事が「存立危機事態」になり得るとした高市早苗首相の国会答弁をめぐり日中の応酬が続く中、外務省の金井正彰アジア大洋州局長は18日、訪問先の北京で中国外務省の劉勁松アジア局長と協議した。双方が互いの立場を主張し、協議は平行線をたどった。
日本外務省によると、定期的な協議で首相の国会答弁の前から調整していた。金井氏は中国の薛剣・在大阪総領事による「汚い首は一瞬の躊躇(ちゅうちょ)もなく斬ってやるしかない」とのSNS投稿に改めて強く抗議し、早急に適切な対応をとるよう求めた。中国政府による日本への渡航自粛や日本留学の「慎重な検討」の呼びかけなど事実上の対抗措置についても、日本国内の治安は「決して悪化していない」と反論し、適切な対応をとるよう要求した。
一方、中国外務省によると、中国側は首相の国会答弁について「厳正な申し入れ」を行い、発言を撤回するよう求めた。協議で劉氏は「(首相の発言は)中日関係の政治的基礎を損なうものであり、性質と影響は極めて劣悪だ」と指摘。「誤った発言を撤回し、中国に関する問題でいざこざを起こすのをやめ、具体的な行動をもって間違いを正し、中日関係の政治的基礎を守るよう求める」と述べたという。日本外務省は、こうした中国側の発言に対して金井氏は反論し、「一貫した立場を説明した」としている。従来の政府見解に変更がないとの立場を説明したとみられる。
高市首相と中国の習近平(シーチンピン)国家主席は10月31日、訪問先の韓国で初めて会談し、「戦略的互恵関係」の推進や「建設的かつ安定的な関係」の構築を確認していた。だが、今月7日の台湾有事をめぐる首相の国会答弁をきっかけに、両国関係は急速に悪化している。中国政府は首相の発言を受け、日本への渡航自粛などの措置を相次いで打ち出している。中国外務省の毛寧報道局長は17日、今週末の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、李強(リーチアン)首相が高市首相と面会する予定はないとも述べた。木原稔官房長官は18日の記者会見で、「日中間の様々な対話を行うことについて、日本側はオープンだ」と述べ、対話の機会を追求する意向を示した。
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