韓国のイ・ジェミョン大統領は、ことし6月の就任後、初めて23日から2日間の日程で日本を訪れます。

23日午後には、石破総理大臣と会談する予定で、韓国大統領府で外交と安全保障政策を統括するウィ・ソンラク(魏聖洛)国家安保室長は、22日の記者会見で「未来志向的な両国関係の協力のあり方について意見交換し、個人的な絆を深めることになると思う」と強調しました。

一方、イ大統領が就任前、歴史問題などで日本を批判してきたことについてウィ室長は「野党時代は批判する役割があったので大統領も批判的だった」としたうえで、前の政権による「徴用」をめぐる問題の解決策について「政府間の合意を覆すのは信頼の問題につながる」として引き継ぐ考えを示しました。

イ大統領は、日本を訪れたあと8月25日、アメリカのワシントンでトランプ大統領と会談することになっていて、ウィ室長は、日米両国への訪問を通じて3か国の連携強化も確認する意向を示しました。

韓国の大統領が日本を訪れるのはおととし5月以来で、イ政権としては首脳が往来する「シャトル外交」を今後活発化させながら、両国関係の強化を図っていく方針です。

イ大統領の対日発言の変遷

韓国のイ・ジェミョン大統領は、過去には、日本に対して厳しい発言を繰り返してきたことでも知られていますが、最近は、日本との連携強化に取り組む姿勢を鮮明にしています。

ソウル近郊のソンナム(城南)市で市長を務めていた2016年に、日本との軍事情報包括保護協定=GSOMIAの締結をめぐって、当時のパク・クネ(朴槿恵)政権を批判した際には、「日本は敵性国家だ」などとSNSに投稿しました。

また、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の放出の際には、「『核汚染水』の放出は第2の太平洋戦争として記録される」と述べたほか、前のユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が「徴用」をめぐる問題の解決策を発表した時も、「日本の戦争犯罪に免罪符を与えるものだ」として撤回を求めてきました。

ただ、ことし4月にユン前大統領が罷免されて以降、イ大統領の対日発言に変化が見られるようになります。

大統領選挙の期間中、領土や歴史をめぐる問題には「原則的に対応する」とする一方で、「私は日本の国民に対してとても好感を持っている」などと述べ、民間交流や経済の分野での両国間の協力が必要だと指摘しました。

ことし6月に大統領に就任した日の記者会見でも、日本と連携していく考えを強調した上で、ユン政権による「徴用」をめぐる問題の解決策については、「国家間の関係は政策の一貫性が重要だ。国家の政策を個人的な信念で一方的に強要したり、貫いたりすることは容易ではない」と述べ、政権として引き継ぐ意向を示しました。

その後も、日本との連携強化に取り組む姿勢を重ねて強調していて、専門家からは、イ大統領が韓国の国益を中心とする「実用外交」を掲げる中で、日本との良好な関係を保つことが得策だと判断しているという指摘が出ています。

イ大統領は、8月25日にアメリカでトランプ大統領と初の首脳会談を行う予定ですが、韓国メディアは、大統領がアメリカより先に日本を訪問するのは異例だとしていて、日本との関係を重視しているあらわれだとする見方も出ています。

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