愛犬を抱える男性(パリ、11月16日)=ロイター

【ロンドン=犬嶋瑛】欧州連合(EU)の主要機関は26日、犬と猫の飼育や販売に関する新規制で大筋合意した。繁殖や販売の施設に十分なスペース確保を求めるほか、個体識別のためのマイクロチップ装着などを義務付ける。違法業者による密売や劣悪な環境での繁殖が問題になっており、EUとして初めて犬猫の動物福祉に関する規制に乗り出す。

規制はEU加盟国からなる閣僚理事会と、立法機関の欧州議会が大筋で合意した。2026年に採択し、28年から適用が始まる見通し。取扱業者にコンテナでの飼育を禁止するなど最低限のスペースを確保するよう統一の基準を設ける。繁殖や販売の施設ごとに管轄する当局が認定した研修を受けた飼育員を配置することも求める。

不正な取引を防ぐため、各国で導入が進んでいる個体識別番号を記録したマイクロチップの装着や登録義務を強化する。市場で流通している犬と猫に適用した後、すべての犬と猫へのマイクロチップ装着を飼い主に義務化して抜け穴を塞ぐ。「かわいさ」「珍しさ」といった見た目を重視した極端な体形的特徴を持つ犬や猫を競技会に出展できなくすることも合意に盛り込んだ。

欧州では違法業者による劣悪な環境での繁殖が動物福祉に反するとして対策が議論になってきた。国境をまたぐ犬や猫の密輸も横行しているとして欧州委員会が問題視している。輸送トラックなどで密輸される事例が多く、欧州委がまとめた調査によると22年7月から23年7月までに食品飼料緊急警報システム(RASFF)に犬や猫に関する不正取引の疑いで467件の通報があった。

ドイツでは適切な飼育環境や散歩の義務など厳しい規制を背景にペットショップでの販売は減少しているものの、違法な業者による不衛生な飼育が指摘されている。東欧で繁殖した犬や猫を犯罪組織が不正にドイツやスイスに輸入しているとして、ドイツでは「子犬マフィア」が近年話題になった。

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