25年のオゾンホールの最大面積は2286万平方キロメートルだった=NASA提供

【ヒューストン=赤木俊介】米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気局(NOAA)は南極上空のオゾンの量が極端に少なくなり穴が開いたような状態になる「オゾンホール」が国際的な取り組みにより縮小したと発表した。オゾン層を破壊する物質の生産を禁じる国際条約が回復を促進したという。

NASAとNOAAは26日までに、2025年のオゾンホールは最大面積がおよそ2286万平方キロメートルだったと発表した。観測史上最大を記録した06年と比べ3割ほど小さい。06年のオゾンホールの平均面積は2660万平方キロメートルだった。

地上から約10〜50キロメートル上空の成層圏でオゾンが多い層をオゾン層と呼ぶ。オゾン量が減ると、太陽から地上に到達する有害紫外線が増える。冷蔵庫の冷媒などに使われるフロンがオゾン層を破壊すると判明し、1987年にこうした物質の生産を禁じる国際条約「モントリオール議定書」が採択され、89年1月から発効した。

南極オゾンホールは毎年、拡大と縮小を繰り返している。例年9〜10月ごろに最大面積に達し、11〜12月に消滅する。オゾンホールは80年代の初めから観測されている。

NASAによると、2025年のオゾンホールは過去10年間の平均よりも3週間ほど早く縮小し始めた。NASAのオゾン層研究チームに参加する米メリーランド大学のポール・ニューマン氏は声明で、オゾンホールの「発生時期が遅くなり、消滅も早まった」と説明した。

フロンは大気中で強い紫外線を受けると分解し、オゾン層破壊の触媒となる塩素を発生する。ニューマン氏は成層圏の塩素濃度がピークに達した25年前と同水準であれば、25年のオゾンホールの面積は観測値よりも259万平方キロメートルほど大きかったはずだと指摘した。

モントリオール議定書などの取り組みを維持できれば、オゾンホールが2060年代後半には完全に消失するという予測もある。オゾン層保護の成果は気候変動の抑制に向けた国際協力の青写真となりそうだ。

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