
【ニューヨーク=谷本克之】米東部ニューヨーク州のゲーミング施設立地委員会は1日、ニューヨーク市内で3つの事業者のカジノの開設計画を承認した。今後州の別の委員会がライセンス発行の有無を最終判断する。最も早い計画で2030年の完成を予定し、実現すれば市内で初めてテーブルゲームのあるカジノが誕生することになる。
クイーンズのメッツ球場やJFK空港隣接地、ブロンクスに
申請が認められた場所はニューヨーク市の東部クイーンズにある米大リーグのニューヨーク・メッツの本拠地スタジアムの隣接地、ニューヨーク市中心部マンハッタンの北部にあたるブロンクス地区、ジョン・F・ケネディ(JFK)国際空港の近辺の3つだ。
有数の観光地であるニューヨーク州は、米国の他の東海岸の州で合法化が相次ぐなか州外に流出していた需要を取り戻す狙いがある。
計画地はそれぞれニューヨーク市中心部のマンハッタンから車で1時間以内に位置しており、州は33年に3施設合計でカジノの収入は約55億ドル(約8544億円)に上ると試算する。
今回の選定結果を受けて州内のカジノを規制するニューヨーク州ゲーミング委員会が年内にライセンス発行を最終承認する。
投資額は合計で1兆円超え
3つの提案のうち目玉となるのは、米ハードロック・インターナショナルと著名投資家スティーブ・コーエン氏が、ニューヨーク・メッツの本拠地スタジアムの隣に計画するカジノを含む統合型リゾート(IR)だ。
53億ドルを投じ、10万平方メートルの土地に1000室のホテルや5000席ほどのコンサート会場などを整備する。30年6月の開業を予定する。ハードロック・インターナショナルによると建設作業員や施設で働く従業員など2万3000人の雇用を生み出し、30年間で335億ドルの税収をもたらす見込みだという。
そのほかには、マレーシアのカジノ大手、ゲンティンがJFK国際空港の近くで運営するスロットマシンに特化した施設「リゾーツ・ワールド」を33億ドルを投じて拡張する提案と、カジノ運営会社の米バリーズ・コーポレーションが23億ドルを投じてマンハッタンの北のブロンクス地区で開発するIRの案が選定された。
ゲーミング施設立地委員会のヴィッキー・ビーン議長は「ニューヨークには3つのカジノを支えられる十分な需要がある」と述べた。
税収の流出を食い止める
米国のカジノをめぐっては、ニューヨーク周辺の東海岸の州で1990年代以降カジノの合法化が相次いできた。米国ゲーミング協会によると2024年の実店舗の商業カジノの市場規模は497億ドルと前年から0.8%増加した。
ニューヨーク州は税収など年間10億ドル以上が州外のカジノに流出しているとして、需要を取り戻すために13年に州憲法が改正。州内で最大7つのカジノ施設を認可することを可能にした。既に北部では4つのカジノが建設され、近年ではニューヨーク市が位置する南部での開発が焦点になっていた。
22年に市内や周辺地域に最大3つのカジノライセンスを発行する計画が発表されると、タイムズスクエアなどマンハッタンでの開発を含む8件の申請が提出された。ただ、ブロードウェイの業界団体が需要を奪われることを念頭に反対したほか、交通渋滞を懸念する地元住民などの理解を得ることができずにマンハッタンでの計画は頓挫し、今回承認された3つの提案に絞られていた。
州によると3つの計画を合わせるとライセンス料で15億ドル以上の収入が生まれ、それぞれの施設が10年間でもたらす税収の合計は93億ドルを超える。税収は市内の地下鉄の改修や、教育予算の拡充、ギャンブル問題の教育・治療に充てられる。
「恥を知れ」地元は依存症懸念
一方で、選定された提案も地元からの反対は根強い。ニューヨーク・メッツの本拠地スタジアムの隣に開発する計画をめぐっては、選定結果が発表された場で、地元の団体が「恥を知れ」と声を上げた。同団体に所属するジャック・ヒュー氏はギャンブル依存症や地元経済への影響を懸念し「地元の高齢者や労働者が『金づる』として搾取されることになる」と力を込めた。
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