コームズ氏㊨はウェシュラー氏㊧とともにバフェット氏の運用を引き継ぐとみられていた=ロイター

【ニューヨーク=竹内弘文】著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは8日、運用担当者のテッド・コームズ氏が退社すると発表した。米銀最大手JPモルガン・チェースに移籍する。バフェット氏の最高経営責任者(CEO)退任を目前に控え、後継体制への不透明感が高まりバークシャー株に重荷となっている。

コームズ氏は2010年にバークシャーに入社し、12年入社のテッド・ウェシュラー氏と株式ポートフォリオの一部の運用を任されてきた。コームズ氏は20年からバークシャー傘下の米自動車保険会社ガイコのCEOも務めていた。

バフェット氏は声明文で「トッドはガイコで多くの素晴らしい人材獲得をしたし、事業の拡大に貢献した。JPモルガンは(コームズ氏獲得という)良い判断を下した」とコメントした。

95歳のバフェット氏は25年末でバークシャーのCEO職から退く。会長として引き続き経営に関与するものの、日常的な経営判断や投資判断からは距離を置くと見られている。コームズ氏はウェシュラー氏とともに、バフェット流投資を引き継ぐと目されていた。

コームズ氏は26年1月からJPモルガンで、米国の重要産業に戦略投資するグループを率いる。同グループは防衛・航空宇宙、医療、エネルギーの分野で投資機会を探し、100億ドル(約1兆6000億円)規模の株式投資を実行する。コームズ氏はJPモルガンの取締役を務めた経験がある。

卓越した投資機会の選別から「オマハの賢人」と呼ばれるバフェット氏が25年5月の株主総会で年末の退任を発表して以来、バークシャー株には逆風が吹く。

A種株の株価は総会以降、1割近く下落した。S&P500種株価指数が同期間に2割高になったのと好対照だ。バフェット氏への絶大なる信任がもたらす「バフェット・プレミアム」は既に一部が剝落している。

コームズ氏の退任はバフェット氏が退いた後の経営体制に対する懸念をさら高める結果になった。発表を受けてバークシャーのA種株は8日の取引で一時、前週末比3%安になった。

バークシャーは8日、最高財務責任者(CFO)や事業部門の責任者交代など幹部人事の異動も発表した。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。