
【ニューヨーク=佐藤璃子】11日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比646ドル(1.3%)高の4万8704ドルで取引を終えた。前日の米利下げが景気を支えるとの見方を背景に11月12日以来、1カ月ぶりに最高値を更新した。一方で人工知能(AI)関連への過剰投資を巡る懸念も同時に広がり、ハイテク株には売りが広がった。
米連邦準備理事会(FRB)は10日、年内最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続となる0.25%の利下げを決定した。パウエルFRB議長は記者会見で今後の政策判断について経済指標を見極める姿勢を示したほか、利上げが念頭にないことに言及した。

足元で労働市場の減速に対する警戒感も高まっていることから、26年も利下げが継続するとの観測が広がっている。市場では「(パウエル氏の)タカ派要素が薄い発言は年末にかけて株価を押しあげる材料となる」(米調査会社CFRAのサム・ストーバル氏)との見方が広がった。
個別銘柄では、米ビザが6%高、米ナイキが3%高、米ユナイテッドヘルス・グループが3%高と高かった。業種別では金融や資本財などの景気敏感株に加えて、ヘルスケアや生活必需品などにも幅広く買いが入った。

半面、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は0.3%安で取引を終えた。米IT(情報技術)大手オラクルは10日に公表した四半期決算で売上高が市場予想に届かなかった一方で、2026年5月期通期の設備投資計画を積み増す方針を明らかにした。収益に見合わない投資への懸念から売りが膨らみ、11日は11%安となった。
AI投資の過熱感への警戒が再び浮上し、半導体株を中心にテック売りが広がった。英アーム・ホールディングスが4%安、米インテルが3%安、米スーパー・マイクロ・コンピューターが3%安となった。
米バンク・オブ・アメリカ証券は10日付のリポートで、オラクルの決算を「一時的な弱さに過ぎず、ファンダメンタルズ(企業の基礎的条件)は依然として堅調である」と評価した。
一方でAI関連銘柄を巡っては「AI産業が市場の予想ほど広く迅速に利益を上げられないことが明らかになるにつれ、逆風が生じる可能性がある」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)と持続性を疑問視する市場関係者の声もある。
S&P500種株価指数は前日比14ポイント上昇し6901と10月下旬以来の最高値を更新した。
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