オーストラリアで16歳未満のSNS利用を制限する法律が施行されて1週間が過ぎた。年齢で一律に規制する世界初の法律に賛同が集まる一方で、利用者の年齢確認は技術的に難しく、「抜け穴だらけ」との指摘も出ている。規制対象となったSNS運営企業が、豪州政府を提訴する事態にも発展した。
- 【実際に起きたこと】SNSが息子を死に追いやった 父の後悔と執念、世界初の規制法作る
オンライン掲示板の米レディットは12日、豪州の最高裁に違憲審査を求める訴訟を起こした。レディットは、ユーチューブやフェイスブックなどと共に規制対象となった10種類のSNSの一つ。
法律は、企業側に16歳未満の既存アカウントの凍結や新規アカウントの作成を防ぐ措置を求めている。違反した場合、最大で4950万豪ドル(約51億円)の罰金が科される。レディットは、こうした法律が政治的表現の自由を侵害していると主張している。
法施行前から、企業側の反発はあった。政府は、パスポートなど公的な身分証で年齢確認を強制することは、個人情報が流出する恐れがあるとして見送った。その結果、年齢確認が技術的に難しくなったが、その対応は企業側のみに求められているためだ。
法律の実効性にも疑問の声があがる。保護者など16歳以上が開設したアカウントを子どもが使ったり、仮想プライベートネットワーク(VPN)を経由して国外からの接続を装って利用したりするなど、抜け穴の多さも指摘されてきた。
一方で、施行前に実施した豪州政府の調査では、10~15歳の96%がSNSを利用し、約半数がSNS上で「いじめに遭ったことがある」と回答。法規制を歓迎する声も根強い。
団体職員の60代男性は「他者との接し方を学ばないまま大人になろうとしているのだから、今の子どもたちは気の毒だ。長い目で見れば、法律は豪州社会を救うだろう」と話す。中学1年の男子生徒(13)も「デバイス越しにしかコミュニケーションを取れない人間にはなりたくない」と賛成した。
アルバニージー首相は10日、抜け穴の多さを認めつつ、「成功とは、私たちがこうして議論しているという事実だ」と発言。「完璧ではないだろうが、これは大きな変化だ」と自賛した。ウェルズ通信相も「世界で最も裕福な企業に義務の履行を求めることをちゅうちょしない」と述べた。
ただ、現地メディアによると、保護者や知人にアカウントを開設してもらって利用するケースが相次いでいるという。中学生の娘を持つ40代女性は「娘が聞いたことのない中国製SNSを使い始めていた」と話す。規制対象外のSNSに乗り換える動きも出ているようだ。
豪州政府は、規制対象のSNSは施行後も「拡大する可能性がある」としているが、いたちごっこになる可能性もある。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。