米CVSヘルスの前CEO、キャレン・リンチ氏=ロイター

【ワシントン=野一色遥花】米国で女性の最高経営責任者(CEO)が減っている。2025年に就任したCEO全体のうち女性の比率は25.6%と新型コロナウイルス禍の20年以来の低水準となった。業績悪化による引責という通常の理由に加え、国内で強まる反DEI(多様性、公平性、包摂性)が一因との見方もある。

米調査会社のチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスがまとめた。25年1〜11月の女性のCEO就任比率は前年同期比で2.2ポイント減少し、初めて2年連続で低下した。この期間の女性CEOの就任数は439人と同62人減ったほか、離職人数は379人と同6人増えた。

女性CEO退任のハーシー、「世界で最も女性が働きやすい会社」

近年の大手企業による女性CEOの退任ではヘルスケア大手のCVSヘルス(24年10月)と、チョコレート大手のハーシー(25年8月)がある。いずれも後任は男性だった。会社側は業績悪化が理由と説明している。

米調査会社のアルトラタは民間企業の女性幹部の減少傾向について「政府のDEIに関する方針や政治の風潮の転換の影響がある」と指摘する。

米国では反DEIの動きが強まっている。米人事管理局(OPM)は25年1月下旬、各省庁の管理者にDEIを促進する部署の事実上の閉鎖指令を出した。トランプ政権は大学に反DEI施策の徹底、留学生比率の押し下げなどを求めている。

CVSとハーシーはいずれも24年まではフォーム10K(有価証券報告書に該当)などでDEI推進をアピールしていたが、25年以降はこうした記載を削除するか削減している。ハーシーは21年に「女性が世界で最も働きやすい会社」と米フォーブズ誌で特集されていた。

女性CEOの拡大、「若手の登用や育成必須」

失敗する可能性が高い状況で女性がリーダー役を任されやすい現象「ガラスの崖」を指摘する声もある。米人材会社のラッセル・レイノルズ・アソシエイツ(RRA)による元CEO1317人を対象とした調査で、18〜24年にかけて女性CEOの32%が解任されたのに対し、男性CEOの解任は24%にとどまった。

RRAの別の調査では、24年のS&P500種株価指数を構成する企業で女性CEOの平均任期は3年強と男性より5年強、短いことが分かったという。

RRAのマルゴ・マックシェーン氏は「女性CEOは危機や低迷期など、失敗のリスクが一番高い時に任命されやすい。こういう時期こそ注視されやすく、退任に追い込まれやすい」と指摘した。

調査会社アルトラタのマヤ・インバーグ氏は女性CEO拡大について「幹部となり得る候補者が十分輩出されるためには若手女性の登用や育成があってこそだ」と話す。

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