
中国人民解放軍の制服組トップ、張又俠氏が「重大な規律違反」の疑いで調査を受け、事実上失脚しました。習近平(シー・ジンピン)国家主席の盟友とみられていた軍最大の実力者が粛清され、世界に衝撃が走っています。習体制の内部でいったい何が起きているのでしょうか。
中国の政治・社会が専門の阿古智子・東大教授はラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演し、習氏の権力基盤は固まっているようにみえるものの、今回のように意に沿わない人物の粛清を続けていては「強固な体制を築けない」と指摘しました。そのうえで、習体制が今後「非常に不安定」になるとの見通しを示しました。
中国軍の最高指導機関である中央軍事委員会は7人のメンバーのうち、トップの習氏ともう一人を除く5人が失脚するという異常事態になっています。軍の指揮系統が混乱するのは避けられないとの見方が少なくありません。阿古氏は、軍に限らず「ひとりだけの力で組織は動かせず、信頼する人を側近として確保しなければ安定しない」と述べました。
今回の件は、中国のビジネス界にも不安を広げているといいます。政治的な引き締めがこれまで以上に強化され、中国国内で自由にビジネスができなくなるのではないかとの懸念が高まっているからです。阿古氏は今回の粛清劇を機に「中国を離れようという人がすでに出てきている」と明かしました。
気になるのは、対日政策への影響です。習政権は昨年11月の台湾有事をめぐる高市早苗首相の発言に反発し、経済と軍事の両面から日本への威圧を強めています。阿古氏は習氏が自身への求心力を高めるためにも「日本に強硬な姿勢を示すしかない」との見方を示しました。
中国軍は台湾だけでなく、尖閣諸島の周辺でも活動を活発化させています。阿古氏は「(日中の間で)突発的な衝突が起こらないように、緊張を弱めていく工夫をしなければならない」との考えを強調しました。
阿古氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。
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(編集委員 高橋哲史)
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