
28日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前日比71ドル(0.2%)高で取引を終えた。前日の取引終了後に5〜7月期決算を発表したエヌビディアは中国事業の先行き不透明感から1%安となったが、業績自体は堅調だった。人工知能(AI)半導体の需要の強さが確認できたとして一部の半導体株は上昇した。
エヌビディア決算以外にも、市場で注目された材料がある。世界的人気歌手のテイラー・スウィフトさんの婚約発表だ。スウィフトさんは26日にSNSを通じ、米プロフットボールNFLのトラビス・ケルシー選手との婚約を発表した。
スウィフトさんの投稿からブランドや商品を見極め、売り上げ増加を見込み株を買う動きが進んだ。特に話題になったのが、アパレル大手の米ラルフ・ローレンだ。投稿された写真でスウィフトさんが同ブランドのドレスを身にまとっていたとされる。同社の株価は婚約発表前日の25日比で4%上昇した。
米ジェフリーズは27日付のリポートで「ブランドの強さと今後の持続的な成長を裏付けるものとなった」と指摘。NFLのシーズン開幕や10月に控えるスウィフトさんの新アルバム発売で二人に注目が集まれば、二人のお気に入りであるラルフ・ローレンにも追い風になるとの見方を示した。
アパレル大手のアメリカン・イーグル・アウトフィッターズも注目を集めた。婚約発表翌日の27日、最も注目が高まっているタイミングでケルシーさんが手掛ける衣料品ブランドとの限定コラボを発表した。同日、アメリカン・イーグルの株価は前の日比9%高と急騰した。
同社は7月下旬、有名白人俳優を起用し「ジーンズ」と「遺伝子(ジーン)」を掛けた広告を打って話題を集めた。白人至上主義を連想させるとの批判があがる一方で、トランプ米大統領が広告を擁護したことで保守派の消費者を中心に支持が広がり、株価も上がっていた。
婚約発表直後のブランドコラボが株高をさらに後押しする格好となり、同社の株価は28日時点で7月末比22%高で推移している。
熱狂は株式市場の外にも広がる。賭けサイトのカルシでは、二人が年内に結婚する確率への賭けが急増した。二人の人気にあやかろうとする企業も目立つ。料理宅配のグラブハブや米ペプシコが5月に買収したソーダブランドの「ポッピー」などはSNSで、2人の投稿に似せた広告写真を掲載した。
これまでもスウィフトさんは様々な経済現象を生んできた。2024年12月に閉幕した世界ツアーは興行収入が20億ドル超えを記録。関連消費の増加やコンサート会場付近の宿泊費・物価の上昇から「スウィフトノミクス」や「スウィフトフレーション」といった造語も登場し、話題となった。
もっとも、話題先行で買いが進んだ分、熱が冷めやすい側面もある。婚約発表に関連して宝飾品販売大手のシグネット・ジュエラーズの株価は27日までの2日間で10%上昇したものの、28日には前日比4%安で引けた。一時的な熱狂を長期的なブランドイメージの構築につなげていくことはそう簡単ではない。
(ニューヨーク=佐藤璃子)
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