ラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演した益尾知佐子氏

中国政府は24日、日本の20企業・団体をデュアルユース(軍民両用)品の禁輸リストに加えたと発表しました。高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言に端を発した中国の日本に対する威圧は、収まる気配がありません。経済だけでなく、安全保障の面でもじわじわと圧力を強めている点に注意が必要です。

東シナ海の日中中間線の付近で、気がかりな動きがありました。2025年末と26年1月の2度にわたり、最大で約2000隻の中国漁船が密集して巨大な逆L字型の「壁」を形成していたのです。中国海警局や軍が活発に活動する海域での不気味な動きは、習近平(シー・ジンピン)政権がふつうの漁民を「海上民兵」として動員する訓練だったのではないかとの見方が出ています。

この問題を追ってきた九州大学大学院の益尾知佐子教授はラジオNIKKEIのポッドキャスト番組「中国経済の真相」に出演し、こうした海上民兵の動向について「国防動員の一環であり、中国の海洋政策が新たな段階に達しつつあることの表れだ」との見解を示しました。

益尾氏によると、習政権は2017年ごろから人民解放軍の末端の組織改革を進め、軍と連携して海上民兵を動員できる体制を築いてきました。ここに来て東シナ海で2000隻というかつてない規模の中国漁船が整然と隊列を組んだことは、海上民兵をいつでも動員できる能力を示し、日本や台湾に圧力をかける狙いがあったとみられます。

益尾氏は「中国が今後、この能力を使っていかないわけがない」と警戒しています。表向きは民間人の海上民兵は、軍事力を行使する手前の「グレーゾーン作戦」の実行部隊です。実際、中国が南シナ海の実効支配を強めるうえで、海上民兵は一定の役割を果たしてきたといわれています。

日本はどう対処すればいいでしょうか。益尾氏は「日本の対応は後手に回っている」と警鐘を鳴らします。

昨年11月に3隻目の空母「福建」を就役させ、太平洋への本格的な進出をめざす習政権にとって、沖縄と台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」の内側は自国防衛の最前線です。中国が海上民兵を含むあらゆる手を使って影響力を拡大しようとしているのに、日本政府は十分な準備ができていないのではないか。益尾氏はそんな懸念を抱いています。

益尾氏の解説は以下のポッドキャストでお聴きいただけます。

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(編集委員 高橋哲史)

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