
イランの最高指導者ハメネイ師が米国とイスラエルによる攻撃で死亡した。中東の地域大国イランが重大な岐路に立つ。権力移行期の混乱を抑えるとともに、戦火の拡大を防がなくてはならない。
2月28日に始まった戦闘で、すでに中東からのエネルギー供給に懸念が強まっている。日本を含む国際社会は世界経済への打撃にも注意し、速やかな鎮静化を探る必要がある。
ハメネイ師は1989年に革命の父、ホメイニ師を継いで第2代最高指導者となり、イスラム教シーア派の大国を37年間統治した。反米・反イスラエルを貫き、核開発を進めた。国内では反体制派を弾圧し、強い批判を招いた。後継者によってはイランのあり方ばかりか中東の秩序も激変しうる。
イスラム革命体制は揺らぐ。権力の空白が内紛や分断といった混乱を招けば、周辺国にも悪影響が及ぶ。ペゼシュキアン大統領らによる暫定指導体制は、権限移行に細心の注意が求められる。
トランプ米大統領は「イラン国民が自国を取り戻す最大の機会だ」と蜂起を呼びかけた。出口戦略ははっきりしない。体制転換に固執し、軍事行動を拡大するようなことがあってはならない。
法的根拠の乏しい米イスラエルのイラン攻撃そのものが大いに問題だが、たとえ強権的であっても他国の指導者を殺害するのは常軌を逸している。こんな軍事行動が横行する秩序は望ましくない。
イランはハメネイ師側近や革命防衛隊の首脳らも殺害され、全土では200人以上が死亡したとの報道がある。激しい反撃を誓い、イスラエルや、米軍が駐留するサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、バーレーンなどにミサイルを発射した。大半が迎撃されたが、一部着弾したもようだ。
報復の応酬を食い止めなければならない。エネルギー供給の停滞が深刻に危惧される。海運大手がエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の航行停止を決めた。原油や天然ガスの価格に上昇圧力がかかるなど市場が動揺し、世界経済の重荷となるリスクがある。
死傷者の拡大を防ぐのが最優先であることは論をまたないが、同時に経済への悪影響にも目配りが要る。日本は米イランを含む当事国に対し、問題意識を共有する国々と共に懸念を明確に伝え、緊張緩和を求めなければならない。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。