ニューヨーク証券取引所=ロイター

【ニューヨーク=佐藤璃子、吉田圭織】米国とイスラエルによるイラン攻撃から約3週間がたち、米国の金融市場では紛争長期化への警戒感が一段と強まっている。追加利下げの時期が遠のいたとの見方も加わり、リスク資産のみならず相対的に安全な資産とされる金(ゴールド)や米国債にも売りが広がっている。

週間で下げが最も大きかったのが、これまで「安全資産」とされ地政学リスクが高まる局面で買われてきた金だ。原油価格の上昇によるインフレ懸念や利下げ観測の後退を受けた金利上昇を背景に前週までと比べても売りが加速し、週間で1割安となった。

市場では「金はここ1年ほどで個人投資家による投機的な買いが急増した。この軍事衝突に解決の見通しが立たない限り、金価格には下押し圧力がかかり続けるだろう」(英キャピタル・エコノミクスのキーラン・トンプキンス氏)との声があがっている。

貴金属価格の下押し圧力にもなった米10年物国債の利回りは20日に一時前日比0.11%高い4.39%台をつけ、25年8月以来の高水準をつけた。18日までに開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)以降で、米連邦準備理事会(FRB)が利下げ時期を遅らせるとの見方が強まっている。

米金利先物市場の値動きからFRBの政策金利を予想する「フェドウオッチ」によると、年内の利下げが0回との予想が13日(39.07%)から急増し、20日夕時点で66.78%となっている。FRBのウォラー理事は20日の米CNBC番組で、利上げの可能性は排除しつつも「慎重になる必要がある」との認識を示した

利下げ観測後退の一因ともなっている原油価格の急騰には一服感が見られ、米原油先物市場でWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近4月物は週間では0.4%下げた。なおイラン攻撃前の2月27日比では、依然47%高の水準で高止まりしている。

英オックスフォード・エコノミクスのベン・メイ氏は「イラン紛争で中東のエネルギー生産やホルムズ海峡を通る海上輸送への混乱が長期化する可能性が鮮明となってきている。紛争発生直後のエネルギー市場の予測は楽観的すぎだった」と指摘する。

株安にも拍車がかかっている。20日の米株式市場でダウ平均は3日続落し、前日比443ドル安の4万5577ドルで取引を終えた。米軍がイランに対する軍事攻撃を拡大する可能性が意識され、リスク回避姿勢が強まった。週間では1000ドルに迫る下げ幅となり、3年1カ月ぶりの週間続落を記録した。

S&P500種株価指数のセクター別でみると、引き続き消費関連株で下げが目立った。米ゴールドマン・サックスのボニー・ハーゾグ氏は原油高が続けば生活必需品関連の銘柄に売り圧力が強まると指摘する。「過去1年、低所得層を中心に消費は圧迫されていた。ガソリン価格の上昇は追い打ちをかけることになり、需要破壊を招く可能性がある」と警鐘を鳴らす。

テック銘柄は、イラン攻撃から3周目に入り下げ足を速めた。20日はインテルやマイクロン・テクノロジーが5%安、マイクロソフトが2%安と下げが目立った。攻撃当初にあった短期決着で市場影響も限定的という楽観論が後退し、売りが加速している可能性がある。金融銘柄は週間では小幅に反発した。

英金融ブローカー、トレード・ネーションのデービッド・モリソン氏は「イラン情勢が3週目でより不確実性が増した。高エネルギーコストや地政学的リスクが経済や企業収益に与える影響を、市場が過小評価しているのではないかという懸念も強まっている」と見る。さらなる長期化に備えどこに資金を振り向けるべきか、投資家の慎重姿勢は続きそうだ。

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