ワシントン市内をパトロールする州兵=AP

【ワシントン=芦塚智子】米首都ワシントン(コロンビア特別区)は4日、トランプ米政権による州兵の派遣は違法として連邦地裁に提訴した。ワシントンに展開している州兵の撤収と今後の派遣禁止を命じるよう求めた。治安対策を前面に押し出すトランプ大統領はシカゴなど他都市にも州兵を送る意向を示している。

ワシントンのシュワルブ司法長官は声明で、州兵の派遣は「大統領の権限をはるかに逸脱する軍事占領」とし「不必要で望まれていないだけでなく、特別区とその住民にとって危険で有害だ」と批判した。

ワシントンは州ではなく特別区で、大統領の権限が強い。しかし訴状はワシントン市長の同意なしに州兵を送ることは、ワシントンに一定の自治権を認めた連邦法に違反すると主張している。さらに州兵を米軍の指揮下において治安対策にあたらせており、米軍が国内の法執行に関与することを原則禁じた連邦法にも反すると指摘した。

トランプ氏は8月11日、ワシントンの犯罪対策のために州兵を派遣すると発表。これまでにワシントンや他州の州兵約2300人をワシントンに展開した。トランプ氏はワシントンは「安全地帯になった」と成果を誇示し、シカゴやニューヨーク、南部ルイジアナ州ニューオーリンズなどにも州兵の派遣を検討していると表明している。

西部カリフォルニア州の連邦地裁は9月2日、同州ロサンゼルスで6月に起きた不法移民摘発への抗議デモにトランプ政権が州兵を派遣したのは違法だとする判決を出した。州兵の派遣は米軍を国内の法執行に使うことを制限した連邦法に違反すると指摘した。ワシントンが今回の訴訟で示している主張を認める判断だ。

ワシントンは8月にもワシントン警察を連邦政府の指揮下に置くのは違法だとしてトランプ氏やボンディ司法長官らを提訴している。

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