米地銀のPNCは規模拡大を追求(ピッツバーグ)=AP

【ニューヨーク=斉藤雄太】米地銀大手PNCファイナンシャル・サービシズ・グループは8日、同業のファーストバンク・ホールディングを41億ドル(約6000億円)で買収すると発表した。ファーストバンクが支店を構える米西部の営業基盤を強化する。トランプ米政権の規制緩和で米地銀の再編が加速する可能性がある。

PNCは普通株およそ1390万株の株式交換と現金12億ドルの支払いを組み合わせてファーストバンクの株式を買い取る。すでに両社の取締役会は買収契約で合意しており、2026年初頭の取引完了を目指す。

PNCは米東部ペンシルベニア州ピッツバーグに本拠を構える。米連邦準備理事会(FRB)の統計によると、6月末時点で全米に2300の支店を構え、連結ベースの資産規模は約5500億ドルと全米8位だ。

ファーストバンクは米西部コロラド州とアリゾナ州に95店を構え、資産規模は約270億ドルと全米73位だ。PNCは今回の買収によってコロラド州内の支店数を3倍以上の120店に増やし、州都デンバーでの個人向け預金シェアは20%とトップになる。

PNCはビル・デムチャック最高経営責任者(CEO)の指揮のもと、規模拡大による成長志向を鮮明にしている。昨年11月には支店の拡充計画に投じる費用を従来より積み増し、5年間で全米の12都市に200以上の新規出店をする方針を示した。

米金融界では「トランプ政権が銀行の合併審査をより迅速に進めるかどうかの試金石になる」(投資銀行TDカウエン)との観点で、今回の地銀同士のM&Aに関心が集まっている。

バイデン前政権ではM&Aによる銀行の巨大化が競争環境を阻害するとの意見が優勢で、合併審査が長期化するなど銀行再編は進みにくい状況だった。規制緩和路線を敷くトランプ政権への交代で地銀の合従連衡が加速するとの観測が高まっていた。

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