【ニューヨーク=佐藤璃子】9日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比196ドル(0.4%)高の4万5711ドルで終え、約2週間ぶりに最高値を更新した。米雇用統計の年次改定で労働市場の減速が示されたことを受け、市場では米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が強まった。

多くの機関投資家が運用指標にするS&P500種株価指数は0.3%高、ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は0.4%高となり、それぞれ最高値を更新した。個別銘柄ではユナイテッドヘルス・グループが9%高、AI向けサーバーのスーパー・マイクロ・コンピューターが7%高、米仮想通貨交換大手のコインベース・グローバルが5%高と上昇し、市場をけん引した。

米労働省は9日、2026年2月に公表する雇用統計の年次改定について現時点での推計値を公表した。基準となる25年3月時点の就業者数は91万1000人程度の下方修正になる可能性が高く、50万〜80万人の下方修正になるとの事前予想よりも弱含みだ。

結果を受け、市場では「複数回にわたる利下げ観測が広がっており、FRBが0.5%利下げに踏み切る可能性も出ている」(米運用会社ナベリアのルイス・ナベリア最高投資責任者)との声が上がった。

10日には8月の米卸売物価指数(PPI)、11日には8月の米消費者物価指数(CPI)とFRBによる政策の行方を左右しうる物価指標の発表が予定されており、市場の関心が高まっている。

CFRAのサム・ストーバル氏は「明日のPPIが先月よりも低い数字になるとの予想が広がっていることも市場の安心材料となっている。FRBが雇用の弱体化から利下げをすべきか、物価高止まりを気にして利下げを見送るべきかというジレンマを抱えずに済むからだ」と見る。

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