ネパールでは、政府がSNSを使えなくする措置をとったことをきっかけに、8日、各地で若者を中心とした抗議デモが行われ、少なくとも19人が死亡、300人以上がけがをしました。
抗議の声の高まりを受けて9日、オリ首相は辞任しましたが、その後も抗議活動は収まらず、一部が首相の自宅や連邦議会の建物に火をつけたほか、外相や元首相に暴力を振るったと地元メディアが報じるなど、混乱が続いていました。
これを受けて軍は9日夜、声明を出し、治安維持のために街に部隊を配置すると発表しました。
ロイター通信によりますと、一夜明けた10日、首都カトマンズでは武装した兵士が街の警戒に当たっていて、大きな混乱は見られないということです。
現地の映像では、焼け焦げたトラックや高層の建物から煙が上がる様子が確認でき、9日の抗議の激しさがうかがえます。
大統領府はオリ首相は辞任したあとも閣僚は暫定的に職務を続けると発表していますが、抗議活動に参加した若者たちは新たな政権の樹立と議会の解散を求めてきただけに事態がどのように収束するのかは不透明です。
専門家「見通しが立たない状況」

長年、ネパールを研究している京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科の藤倉達郎教授は、抗議活動の特徴について「デモの名前自体が『Z世代のデモ』で、高校生や中学生も含めて20代前後の人たちが中心になっていることだ」と指摘したうえで、抗議活動が広がった背景には貧富の格差の拡大や汚職のまん延など、政府に対する不満が根強くあり、若者をはじめ世代を超えて政府に対する怒りが広がったとしています。
また、抗議活動のきっかけとなったSNSを使えなくする措置については、豊かな生活を求めて海外に出稼ぎに行く国民が多いネパール特有の事情があるとしたうえで、「SNSは無料でビデオ通話や通信ができるので海外で苦労しながら働いている人と、国内に残って苦労している人が連絡を取り合う手段が失われることになる。生活の一番大事なところが断ち切られるという感覚を持った人が多かった」と分析しています。
さらに、今後の見通しについて藤倉教授は「首相が辞任しただけでなく、ほとんどの閣僚のところにデモ隊が押しかけ、全員が避難している。行政、立法、司法、すべての中心が焼かれて完全な空白ができている状態だ」としたうえで、「まだ数日見ないと事態がどれほど沈静化するか分からず、非常に見通しが立たない状況にある」と述べ、事態の収束には時間がかかるという見方を示しました。
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