新型コロナウイルスのワクチンの注射器=東京都港区で2021年6月21日、手塚耕一郎撮影

 新型コロナウイルスのワクチン接種で、効果の指標となる抗体量が急速に下がるなど特徴的な三つの集団を見つけたとする結果を、名古屋大などの研究チームが17日付の米医学誌で発表した。集団ごとに追加接種のタイミングを細かく決められれば、流行の抑制をより効果的にできるようになると期待される。

 ワクチンによる感染防御の効果は徐々に下がることが知られている。個人差があり、追加接種から1カ月ほどで感染してしまう場合もあれば、長期間感染しにくい場合もあり、詳細は不明だった。

 研究チームに参加の福島県立医大が実施する「福島ワクチンコホート」で集めた福島県相馬市などの2526人分のデータを活用。2021年4月~22年11月、初回接種後や追加接種前後の血液検査の結果を解析した。

 ワクチンを接種すると、血中にウイルスの増殖を妨げる抗体が作り出される。6回程度の血液検査の結果から、抗体量がどのように変化したかを2526人それぞれの時系列で再現するため、数理モデルを開発。人工知能を使い、同じ傾向を持つ集団に分けた。

国立感染症研究所が分離した新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=同研究所提供

 その結果、追加接種後に作られる抗体量が多く、下がりにくい「耐久型」が29・6%だった。一方、量は多いもののすぐに低下する「急速低下型」が19・4%、量が少なく下がり方も早い「脆弱(ぜいじゃく)型」が27・7%となった。残り23・6%は平均型だった。

 追加接種後に感染した人数を調べると、脆弱型と急速低下型では3カ月後から感染リスクが高まっていた。耐久型は5カ月後でも一定の予防効果が残っていた。年齢や生活習慣などから各集団に分類されやすい傾向などは分からなかった。

 チームの岩見真吾・名古屋大教授(数理科学)は「追加接種後、早期に感染リスクが高まる人を簡便に見分ける手法を見つけたい。そうすることで、接種の優先順位を決めたり、ハイリスクの人に感染予防を徹底してもらったりすることが可能になる」と話す。

 成果は米医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシンに掲載された(https://doi.org/10.1126/scitranslmed.adv4214)。【渡辺諒】

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