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<9カ国・地域の成人3000人を対象とした臨床試験の結果、「顕著な」体重減少に効果を示したことが明らかになった>

肥満を薬で治療する時代が訪れつつある。GLP-1経口薬の一種であるオルフォグリプロン(orforglipron)が、1日に1回飲むだけで、肥満患者の「顕著な」体重減少に効果を示したことが明らかになった。

約3000人の成人を対象とした多国籍臨床試験では、72週間のオルフォグリプロン投与によって、用量に応じ、最大11.2%の体重減少が確認された。副作用は他のGLP-1薬と同程度だった。

オルフォグリプロンは、セマグルチド(semaglutide)――糖尿病治療薬「オゼンピック(Ozempic)」や、減量目的で使用される「ウゴービー(Wegovy)」――と同じ受容体に作用する。

ただし、食事や水分摂取のタイミングに制限があるセマグルチドの錠剤と異なり、オルフォグリプロンは食事や水分の制限なく服用が可能だ。

「72週間の治療後、オルフォグリプロンを投与された3グループすべてで、有意かつ臨床的に意味のある体重減少が認められた」と研究者らは声明で述べている。

この研究は製薬大手イーライリリーがスポンサーとなり、今週ウィーンで開催された欧州糖尿病学会(EASD)年次総会で発表された。経口薬による減量治療の実現に向けて、大きな可能性を示す結果だ。多くの患者は注射剤よりも飲み薬を好むだろう。

「これは低分子GLP-1薬として、初の第3相試験の完了例だ」と、研究責任者であるウォートン体重管理クリニック(Wharton Weight Management Clinic)のショーン・ウォートン医師は本誌の取材に語った。

経口セマグルチドは高分子だが、オルフォグリプロンは低分子で、経口による服薬が可能なGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬だ。「この錠剤は、製造、服用、流通が容易だ」とウォートンは言う。

腹囲、中性脂肪などの指標も有意に改善

この二重盲検試験(被験者と評価者の両方がどれがプラセボ〔偽薬〕かを知らない状態で行われる試験)では、糖尿病を持たない肥満患者3127人が、アメリカ、中国、ブラジル、インド、日本、韓国、スペイン、スロバキア、台湾の9カ国・地域で無作為に割り当てられた。

研究チームは、健康的な食事と運動習慣を併用しつつ、オルフォグリプロンを1日1回、6mg、12mg、36mgのいずれかの用量で投与した場合の安全性と有効性を、プラセボ群と比較して72週間にわたって検証した。

体重の平均減少率は、6mg群で7.5%、12mg群で8.4%、36mg群で11.2%に達し、プラセボ群の2.1%を大きく上回った。

36mg群では、体重が10%以上減少した患者が54.6%、15%以上が36%、20%以上が18.4%に上り、プラセボ群ではそれぞれ12.9%、5.9%、2.8%にとどまった。

「オルフォグリプロン投与群では、測定されたすべての心代謝指標がプラセボ群より改善した。10%以上の体重減少は、臨床的に有意な改善と関連する治療目標とされている」と研究者らは述べている。

さらに、腹囲、収縮期血圧、中性脂肪(トリグリセリド)、非HDLコレステロールといった指標も、オルフォグリプロン群で有意に改善が見られた。

副作用によって治療を中断したのは、オルフォグリプロン群で5.3〜10.3%、プラセボ群では2.7%だった。最も多く見られた副作用は消化器系の症状で、研究者らによれば、大半は軽度から中等度であり、GLP-1薬に共通するものだったという。

現在のGLP-1薬の多くは皮下注射が必要

研究チームは、セマグルチドのようなGLP-1受容体作動薬によって、平均15%以上、場合によっては20%以上の体重減少が報告されており、心血管リスクの低下などの健康効果も確認されていると述べる。

ただし、現在主に使われているGLP-1薬の多くは皮下注射による投与が必要だ。これが一部の患者にとって治療の障壁となっている可能性がある。

今回の試験にはいくつかの限界があることを、研究チームは認めている。例えば、承認済みの他の肥満治療薬との比較が行われていない点や、BMIの基準値が白人集団をもとに設定されており、脂肪蓄積による健康リスクを抱えながらもBMIが比較的低い人々が除外されている点などが挙げられる。

また、今後、肥満治療薬の選択肢が増えることは、治療の継続率や効果にも影響を与える可能性がある。

一方で、この試験の強みとしては、大規模かつ多国籍の被験者集団を対象としている点がある。被験者のうち、35%以上は男性だった。今回の結果は「高価な注射薬へのアクセスが限られている人々にも、肥満治療の選択肢を広げる可能性を示している」と、ウォートンは言う。

なお、オルフォグリプロンは現時点で、米食品医薬品局(FDA)を含むいかなる規制当局からも承認を受けていない。

別の新たな研究では、セマグルチドの経口投与も安全かつ有効である可能性が示されている。

糖尿病治療薬「オゼンピック」の注射剤を開発したノボノルディスク(デンマーク)が発表した研究では、205人の肥満患者が64週間にわたってセマグルチドの経口薬を服用し、102人がプラセボを服用した。

セマグルチド新実験でも体重減少を確認、副作用は...

その結果、セマグルチドを服用したグループでは平均13%の体重減少が見られ、プラセボ群の2.2%と比べて大きな差があった。

セマグルチド群では、吐き気や消化不良といった消化器系の副作用がやや多く報告されたが、いずれも軽度から中等度だった。研究者らは、この経口薬が注射剤を使用できない人々にとって有効な代替手段となり得ると指摘している。

なお、以前の初期試験では50mgと多めの用量のセマグルチドが使用されていたが、今回の研究では25mgの少なめの用量が採用された。

【参考文献】
Wharton, S., Aronne, L. J., Stefanski, A., Alfaris, N. F., Ciudin, A., Yokote, K., Halpern, B., Shukla, A. P., Zhou, C., Macpherson, L., Allen, S. E., Ahmad, N. N., & Klise, S. R. (2025). Orforglipron, an Oral Small-Molecule GLP-1 Receptor Agonist for Obesity Treatment. New England Journal of Medicine. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2511774

Wharton, S., Lingvay, I., Bogdanski, P., Vale, R. D. do, Jacob, S., Karlsson, T., Shaji, C., Rubino, D., & Garvey, W. T. (2025). Oral Semaglutide at a Dose of 25 mg in Adults with Overweight or Obesity. New England Journal of Medicine, 393(11), 1077-1087. https://doi.org/10.1056/NEJMoa2500969


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