岩手県北上山地を飛ぶイヌワシ=鈴木卓也さん提供

 国の天然記念物で絶滅危惧種の猛きん類・ニホンイヌワシの野生復帰プロジェクトが宮城県南三陸町で来年から本格的に始まることになり、その説明会が27日、同町で行われた。イヌワシの野生復帰に成功すると、国内では初となる。

 このプロジェクトは、地元の研究者や企業などで構成する南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会(鈴木卓也会長)と日本自然保護協会などが事業主体となり、来年から3カ年で国内の動物園で繁殖した個体を南三陸町内に3回放鳥し、定着を目指す。

 南三陸町は町内の翁倉山で、太平洋戦争後に国内で初めてイヌワシの繁殖が確認された歴史を持つ。しかし、自然環境の悪化などから生息数が減り、2012年に飛しょうが確認されたことを最後に、姿を消していた。

町民向けの説明会で話す南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会の鈴木卓也会長(右)=宮城県南三陸町で2025年9月27日午後、佐藤岳幸撮影

 イヌワシの野生復帰を目指すにあたって同協議会などは、10年ほど前から生息環境の改善を進めており、隣接する北上山地(岩手・宮城両県)が国内有数のイヌワシの生息地であることからも、南三陸町での野生復帰を目指すことにした。

 「南三陸イヌワシ野生復帰フォーラム」とした説明会には、町民ら約100人が参加。南三陸町出身の鈴木会長は、国内のイヌワシが減少し、繁殖率も低下している現状を示し、「私自身も『イヌワシがいる町』として、誇りに思っていた。イヌワシが繁殖できる環境をふるさとに残していきたい」と話した。

 協議会メンバーでイヌワシの研究者として知られる秋田市大森山動物園の小松守名誉園長は「動物園にいるイヌワシは元々野生種であり、野生復帰はイヌワシへの恩返しになる。難しいプロジェクトだが、ぜひ成功させたい」と意気込んだ。【佐藤岳幸】

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