
脳腫瘍の治療後に難聴になった東邦音楽大の4年生、倉本知真さん(22)=埼玉県富士見市=が27日、サントリーホール(東京都港区)小ホールでピアノを演奏する。同日に大ホールで開かれる「アフラック クラシックチャリティーコンサート」の一環で、開演前と休憩中に登場する。
倉本さんは1歳の時、脳腫瘍と診断され、1年ほど入院して摘出手術と放射線治療を受けた。ピアノ教室を開いている母(54)のもと、3歳から鍵盤に触れた。「当時は普通に聞こえていたらしい」と倉本さんは言う。
だが、小学1年くらいから聞こえづらくなった。自宅を離れ、神奈川県内で入院しながらリハビリに励んだものの、聴力は戻らなかった。重度の難聴になり、中学3年で右耳に人工内耳を埋め込む手術を受けた。
高校に進学したが、勉強も運動も思うように行かずストレスを抱えた。それでもピアノは続け、母の恩師から演奏を学んで技術を磨いた。指定校推薦で東邦音楽大ピアノ専攻に進学。昨年は約2週間の研修旅行でオーストリア・ウィーンへ渡った。
「ピアノは自分にとっての自信。必要なもので、一生続けられるもの」と話す倉本さん。今年8月には、小児がんサバイバーが集った場でドビュッシーの「雨の庭」を弾いた。仲間たちは素早く、なめらかな約4分強の演奏に聴き入った。アンコールではショパンの「子犬のワルツ」を弾き、大きな拍手を受けた。
サントリーホールでも、ドビュッシーとショパンの作品を演奏する予定だ。
チャリティーコンサートは小児がんと闘う子どもや親を支援するために1999年に始まり、今年で25回目。今回は東京交響楽団と、ピアニストの尾崎未空さんが出演する(招待制)。小児がん経験者が演奏するのは初めてで、倉本さんは「来てくれた人に元気や希望を届けられたらうれしい」と話している。【本橋由紀】
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