玉川大学の酒井裕教授㊧らが研究成果を報告した(東京都千代田区)

玉川大学などの研究チームは脳にある特定の回路に、過去に得た成功体験と異なる方法を模索し続ける機能があるとする研究成果を報告した。生物が環境の変化に応じて、目的の達成に向けて方法を探る仕組みを明らかにした。ラットを使った実験で解明した。今回得られた知見は同じ行動を繰り返す強迫性障害などの精神疾患の理解につながる可能性がある。

玉川大学の木村實名誉教授と同大の酒井裕教授らによる研究成果で、1日(日本時間)、米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載される。東京科学大学や福島県立医科大学、京都大学の研究者も参加した。

脳の深部にある「大脳基底核」と呼ばれる領域に着目した。この領域は試行錯誤をして学習する機能があり、成功体験を学ぶ回路と失敗から学ぶ回路がそれぞれあることが知られている。

研究チームは失敗を学ぶ回路に着目し、別の機能があると突き止めた。回路の神経細胞の働きを調べられるように遺伝子を改変したラットを使った行動実験で確かめた。環境が変化すると、これまで成功してきた方法とは異なる方法を試す役割を担っていた。

玉川大の酒井教授は「過去の成功にとらわれず未来の成功をつかむ機能を実証した」と研究の意義を強調した。この機能が働かないと、過去の成功体験に固執してしまう可能性がある。汚れや細菌への恐怖から過剰に手洗いや入浴を繰り返す強迫性障害などに関わっている可能性がある。

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