理化学研究所の研究は高齢による不妊や流産などのリスクを克服する技術開発に役立つ可能性がある

理化学研究所の研究チームは、老化した卵子の染色体数の異常を抑えることにマウスを使った実験で成功したと発表した。卵子の染色体数異常は、母体の加齢とともに発生頻度が上昇し、不妊や流産の原因にもなるといわれる。今回の成果は、染色体数異常の原因解明や新たな生殖補助技術の研究に役立つ可能性がある。

研究成果は4日付の英科学誌「ネイチャー・セルバイオロジー(電子版)」に掲載された。

卵子はもととなる卵母細胞が、両親から受け継いだ染色体を半分ずつに分配する「減数分裂」を経て作られる。染色体を正しく分配するためには、タンパク質の複合体「動原体」が必要で、この働きによってヒトの卵子の場合、23本の染色体が分配される。卵子の老化によって、染色体の分配に異常が起きやすくなるという。

理研生命機能科学研究センターの北島智也副センター長らの研究チームは、人工的に作製した動原体を使って、マウスの染色体を正常に分配することに成功した。具体的にはまず試験管内で動原体の材料となるたんぱく質をコードするメッセンジャーRNAを合成した。その後、加齢マウスの卵母細胞内に注入した。

減数分裂が起きる際、この人工的に作製した動原体によって、正常な数の染色体を持つ卵子の形成が促進されたという。

北島氏らの研究チームは2024年に、人工動原体をビーズで再現する研究も発表している。今回の研究は動原体に含まれるたんぱく質で人工的な動原体を作った。

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