
戦時中、多くの旧日本軍兵士が過酷な戦場の現実や加害行為のため心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの「戦争トラウマ」に苦しんだ。終戦から80年を迎えた今年、その実態を掘り起こそうと元兵士の子世代による市民グループ「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」がメールなどで体験記を募っている。
家族会は2018年に発足。復員後の父の暴力や酒浸りの生活、無気力な言動などにより、それぞれが違った苦しみを抱えて生きてきたことを語り合う場としての役割を担ってきた。
戦争トラウマを巡っては、厚生労働省が旧陸海軍病院を前身とする国立病院機構などに、治療を受けた兵士のカルテなどの資料が残っていないか照会し実態調査を進めている。
しかし、調査対象は戦傷病者と認定された人に限られている。家族が最近になって戦争トラウマだった可能性に気付くケースは対象外となっており、家族会は厚労省に幅広い調査を求めている。集まった体験記を調査対象の拡大を求める根拠とするほか、記録としても残したい考えだ。
6月から募集を始め、これまでに12人から体験が寄せられた。家族会の黒井秋夫代表によると、そのうち7人分は、6月に大阪市であった証言集会で公表した。その後に届いたものについては、8月24日に東京都渋谷区で開く集会の資料として公表する。数年後には、証言集としての出版を目指す。
体験記は匿名でも受け付ける。【肥沼直寛】
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