さいたま地裁=平本絢子撮影

 教諭から嫌がらせやセクハラを受けて不登校になったとして、埼玉県桶川市立中学に通っていた男性(19)が市と教諭に約4400万円の損害賠償を求めた訴訟で、さいたま地裁は7日、市側に約110万円の支払いを命じた。鈴木尚久裁判長は、吃音(きつおん)の症状がある男性の様子を教諭がまねて笑うなどしたと認定し「生徒を守るべき立場である教諭が、多大な精神的苦痛を与えた」と批判した。

 判決によると、中学で国語を担当していた男性教諭は、原告の男性が入学した2019年4月以降、授業中に吃音の症状が出て文章をスムーズに読めない話し方をまねて嘲笑するなどした。セクハラについては、男性の耳たぶや腹を触ったり、好きな異性を聞いたりしたと認定した。

 鈴木裁判長は吃音を笑った行為について「自身ではいかんともしがたい症状を嘲笑し、他の生徒までが男性を嘲笑する雰囲気を形成した」と指摘。「教育目的とは無関係で、尊厳を傷つけた」として、違法性があると認めた。

 男性側は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとも主張していたが、判決は「(教諭の行為で)PTSDを発症したと認めるに足りる的確な証拠はない」として退けた。

 判決後、男性の父親は「家族と判決内容を相談し、今後の対応を検討したい」と話した。

 桶川市教育委員会は男性が同級生からいじめを受けたとして、23年8月に重大事態に認定し、教諭の行為がいじめの一因になったと指摘していた。市教委は「判決の内容を精査して対応を検討する」としている。【加藤佑輔】

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