10~16日は「アルコール関連問題啓発週間」。昨今では、健康被害のリスクから過度な飲酒を避ける取り組みが盛んになったが、特に注意がいるのは女性ということは、まだあまり知られていない。アルコールの影響を受けやすく、男性と同じペースで飲んでいると早い段階で肝硬変など重篤な病気に進行する恐れがある。
ニッセイ基礎研究所の村松容子主任研究員が厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2023年)を基にアルコールに関する報告書をまとめている。
「リスクが高い」とされる1日あたりの純アルコール量は、男性40グラム以上、女性20グラム以上。純アルコール量は「飲んだ酒の量」×「酒のアルコール濃度」×0・8で算出できる。アルコール分5%、350ミリリットルの缶ビールでは、純アルコールは14グラムとなり、男性は2・8本、女性なら1・4本ほどになる。商品に純アルコール量を表記している酒類メーカーもある。
リスクが高いとされる飲酒をしている人の割合は、男性は14・1%、女性は9・5%。10年からの推移をみると、男性はほぼ横ばいなのに対し、女性は上昇傾向にある。年代別では男性は40代(23・6%)が多く、女性は40代(13・5%)や50代(14・6%)が目立った。
アルコールが及ぼす危険は、脳が未発達な10、20代などでよく知られているが、リポートを執筆した村松さんは「女性にリスクが大きい」と指摘する。「もともと女性で飲酒をする人が少なく見過ごされてきた。女性の適切な飲酒について周知が強化されたのは最近のことで、飲み過ぎに気づいていない人は多い」という。
厚労省によると、女性は男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量が少ない上、女性ホルモンの働きでアルコールの影響を受けやすい。比較的少ない飲酒量で短期間のうちに肝硬変を発症するケースもある。安全とされる純アルコール量が、男性の2分の1にされているのはそのためだ。
女性の社会進出が進み、飲酒の機会が増えた。男性に合わせて飲んでいると、ついお酒が進んでしまう人もいるだろう。村松さんによると、寝不足など悪習慣について、男性は仕事の引退とともに改善されるが、女性は退職しても変わらない傾向があり、飲酒についても継続する可能性が考えられるという。「リスクが高い量の飲酒を避けるよう、意識づけることが重要だ」としている。【嶋田夕子】
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