原爆ドームや厳島神社がある広島県と、岡山後楽園や倉敷・美観地区を抱える岡山県。隣り合う両県の県庁所在地は新幹線で40分ほどの近さだが、訪日外国人客の動向は異なる。広島の外国人観光客数は岡山の4倍近くにのぼるが、1人あたりの平均消費額は岡山を下回るという。どういうことなのか――。
日本政策投資銀行中国支店(広島市)が昨年度、人流データとアンケートをもとに訪日観光客の動向を調査した。
その結果、広島県内の訪問者は138万人で、岡山県内の38万人の4倍近い。だが、1人あたりの平均消費額をみると、広島は3万6534円で、岡山の5万3064円の7割程度にとどまる。大阪府の約9万1千円、香川県の約6万7千円と比べても、広島での消費額は低い。
広島のお好み焼き、カキも理由の一つ?
広島での消費額の低さは、客層にありそうだ。
広島の外国人観光客は欧米豪が約半数を占め、アジアの倍以上。一方、岡山は大阪や香川と同じようにアジアが多く、欧米豪を大きく上回る。4府県とも、アジアの観光客の平均消費額は、欧米豪より4~8割高い。そのため、欧米豪の観光客が多い広島は、平均消費額が低くなっている。
政投銀中国支店の担当者は「広島県内での平均宿泊数は1.9泊と4府県で最も少ない。通過型の観光地となっているのも要因の一つ」と指摘する。広島名物のお好み焼きが安価で、特産のカキはお土産として持ち帰りにくいという理由も考えられるという。
この調査結果について、広島と岡山の知事に尋ねた。
広島の湯崎英彦知事は10月14日の定例会見で「広島はホテルの稼働率が高くて、なかなか予約が取れない。岡山や香川は訪日客数が少なく、比較しても仕方がない」と述べた。ただ、「広島市内や宮島周辺の再開発で高級ホテルの整備が進んでおり、宿泊の拡大に取り組みたい」と語った。
一方、岡山の伊原木隆太知事は同月29日の定例会見で、客層が違うことから「岡山県の努力が出た、と主張するつもりはない」と控えめだ。岡山が中四国の鉄道の結節点となっていることには「得をしている点もあるが、通過型になりやすい。宿泊場所にお金が落ちるので、いかに泊まってもらうかが課題だ」と話した。
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