JR石巻駅の三笠亜希子駅長(手前左から3人目)や元駅長の米山俊秀さん(同2人目)の出発進行の合図でラストランに向かう仙石線の「マンガッタンライナーⅡ」=同駅で2025年12月7日午後0時45分、百武信幸撮影
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 宮城県出身の漫画家、石ノ森章太郎(1938~98年)の作品を車体全体にあしらったJR仙石線の「マンガッタンライナーⅡ」が7日でラストランを迎えた。初代のⅠ号が今年3月に引退し、仙石線唯一のラッピング車両だったが、老朽化のため新型車両に道を譲ることになった。石巻駅には通勤や通学で慣れ親しんだ沿線の住民やファンが大勢集まり、思い出の詰まる列車に感謝と別れを告げた。

 「マンガッタンライナーⅡ」は初代のデビューから約5年半後の2008年9月に運行開始。地域一帯の観光をJRと自治体が官民連携で盛り上げる「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」に合わせ、漫画で町おこしをする石巻市民からの熱い要望を受け導入された。仙石線は東日本大震災で被災し一時運休したが、15年5月30日に全線運転を再開し、Ⅱ号は被災後初めて石巻に帰還。その後も被災した街並みに彩りを届けながら、復興に向かう人たちの心を支えてきた。

 車体は、全体をイラストやカラーで埋め尽くすフルラッピングの仕様で、正面には「仮面ライダー」やご当地ヒーローの「シージェッター海斗」、車体には「サイボーグ009」や「星の子チョビン」などの石ノ森作品が描かれていた。

12月7日にラストランを迎えたJR仙石線の「マンガッタンライナーⅡ」=宮城県石巻市のJR石巻駅で2025年12月7日午後0時26分、百武信幸撮影
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 7日は最終運行に合わせ石巻駅前でイベントが開かれ、会場には「お世話になりました」などと別れを惜しむファンのメッセージが張り出された。午後0時46分、最終の列車が動き始めると、駅構内は見送りに来た人たちの拍手と歓声に包まれた。

 最後の出発進行の合図を三笠亜希子・石巻駅長とともに行ったのは、導入時に石巻駅長だった米山俊秀さん(68)。17年前の初運行時は地元の園児らと一緒に手袋をつけて「時間よし」「乗降よし」と指さし確認し、みんなで手を挙げて送り出したという。その子どもたちも成人となるだけの月日が過ぎ「彼らを通学などでずっと運び続けてきたんだなと思うと、Ⅱ号には『さよなら』よりも『ありがとう』という気持ちが強い」。合図の後はⅡ号に向かって敬礼し、送り出した。

「マンガッタンライナーⅡ」の見送りに集まった市民ら=宮城県石巻市のJR石巻駅前で2025年12月7日午後0時19分、百武信幸撮影
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 今後も一部東北線と仙石線を走る仙石東北ラインには、車体に石ノ森作品のキャラクターが描かれたラッピング列車「風」と「夢」の2編成が走るが、多賀城、本塩釜、松島海岸各駅などの沿線ではもう見られない。

 米山さんは「仙石線はなんといっても県内のメイン路線。マンガッタンライナーが走らないのはさみしく、かつてのように地元の熱意で機運を盛り上げ、Ⅲ号を作ってもらえたら。私もその応援団になりたい」と話した。

 仙石線には1日から、約80年ぶりとなる新型車両のE131系が導入され、来春までに順次新型に置き換えられる。【百武信幸】

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