写真はイメージ=ゲッティ

 障害福祉サービス事業所の全国組織「きょうされん」(東京都)は9日、全国の事業所の職員不足に関する調査結果を発表した。回答した事業所の8割が「職員が不足している」と回答。他産業と比べて低水準の賃金が深刻な人手不足につながっている実態が浮き彫りとなった。

 調査は8~10月に実施。障害者の通所施設やグループホーム(GH)など3142事業所が回答した。職員について「大いに不足している」が18・4%▽「不足」が34・2%▽「やや不足」が31・7%――で、8割超が人手不足を訴えた。

 人員確保が難しい要因(複数回答)として「他産業より賃金が低い」が81・9%、「求める資質・資格を満たす人がいない」が59・1%に上った。

 厚生労働省によると、障害福祉施設・事業所で働く職員の今年7月の平均月給は26万730円。前年9月に比べ4・5%増となったが、2024年の月額賃金の全産業平均は33万400円で大きな開きがある。きょうされんによると、小規模事業所ほど国が事業所に支払う「処遇改善加算」を請求するのに必要な事務手続きなどに人員が割けず、賃金の原資となる報酬が低くなる傾向にあるという。

 職員不足による影響(同)は「管理者・職員の負担増」が最も多く87・1%。「支援の内容・質の低下」が76・7%、「利用者受け入れの抑制」を挙げた事業所も46・7%に上った。

 自由記述欄には「職員の平均年齢が60歳以上で後継者がいない」「夜勤ができる人が限られ、負担が集中している」といった声が並ぶ。「人手不足でGHを休止した」「(重度障害の利用者への)個別支援ができない」など、利用者に影響が及ぶケースもあった。

 厚労省は現在、26年度の報酬改定に向けた議論を有識者検討会で続けている。会見したきょうされんの小野浩・常任理事は「障害福祉にかける予算が低いことが問題の本質。最も被害を受けているのは障害のある人たちだ」と訴え、報酬の引き上げを求めた。【塩田彩】

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