スタッフと一緒に記念写真に納まるラブラドルレトリバーの「ミコ」=大阪市中央区で、中村宰和撮影

 大阪府内最大規模の総合病院「大阪市立総合医療センター」(大阪市都島区)が医療現場で働く犬「ファシリティードッグ」の初めての導入を目指し、寄付を募っている。病気と闘う患者に寄り添って励まし、治療に前向きになってもらう役割が期待され、同センターは「患者に笑顔を届けたい」としている。飼育管理費や人件費など5年間に必要な活動資金6200万円にめどがつけば、2027年に1頭を導入する。【中村宰和】

つらい治療支え

 育成する認定NPO法人「シャイン・オン・キッズ」(東京)と協力して取り組む。専門的な訓練後に導入され、ペアを組むハンドラーは臨床経験5年以上の看護師が務める。医療チームの一員として共に常勤で活動。患者の様子を的確に把握し、患者との信頼関係を築く。小児がんや重い病気で入院中の患者らと触れ合い、検査や手術室に向かう途中まで付き添い、リハビリの支援も行う。

 同法人のファシリティードッグは10年に国内で初めて静岡県立こども病院に導入され、現在、東京と神奈川、静岡の医療機関に4頭いる。関西では兵庫県立こども病院(神戸市中央区)が27年度中の導入を目指す。他の名称で医療機関で活動する犬もいる。

デモンストレーションでハンドラーの膝の上に顔を乗せる「ミコ」=大阪市中央区で、中村宰和撮影

 同法人によると、医療関係者から「リハビリに付き添うと、患者がいつもより長く歩いて驚いた」「終末期の子どもの病室に入り、重い空気が一変して家族全員が笑顔になった」「泣いて手術室に入るまで時間がかかった子どもがスムーズに入室した」「そばにいることで苦い薬を頑張って飲んだ」といった報告が寄せられている。

 大阪市中央区で11月11日にあった関係者向け説明会で、同法人のキンバリ・フォーサイス理事長は「ファシリティードッグの魔法のような力で病気と闘う子どもたちやその家族、医療スタッフ、たくさんの人を癒やす。そんな夢を実現させたい」。同センターの西口幸雄院長は「つらい治療には支えが必要で、ぜひ導入したい」とそれぞれ語った。また、訓練中のラブラドルレトリバーの「ミコ」(雌、2歳)が、物を口にくわえてハンドラーの手元まで持ってきたり、膝の上に顔を乗せたりするなどの実演を披露した。

 同センターは約10年前にも導入を検討したが、費用や感染症対策、患者らの苦情などを懸念して見送った経緯がある。国内の病院での実績を受け、再び導入に向けて動き出した。西口院長は取材に対し「この10年で導入の機運が醸成された。病気と闘い、生きようと患者が勇気付けられるようになってほしい。患者の喜ぶ顔を見たい」と語った。

 寄付の問い合わせなどは同センター総務課寄付担当(06・6929・3569)。詳細はホームページ(https://www.osakacity-hp.or.jp/ocgh/about/facilitydogs.html)。26年5月からクラウドファンディングの実施も予定している。

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