
農林水産省は、全国のスーパー、およそ1000店でのコメの販売価格をまとめ、毎週、公表しています。
それによりますと、今月11日から17日までの1週間に販売されたコメの平均価格は、5キロあたり税込みで3804円と前の週より67円値上がりしました。
値上がりは2週連続です。

このうち産地と品種が単一の銘柄米の平均価格は、5キロあたり税込み4268円と前の週から29円値上がりしました。
一方、備蓄米を含むブレンド米などは、3169円と前の週から21円値下がりしました。
販売量を見ると、コメ全体のうち、銘柄米が58%、ブレンド米などが42%で、前の週よりも銘柄米の割合が6ポイント増えました。
農林水産省は、備蓄米より価格が高い新米の販売拡大が主な要因だとみています。
新米の販売 想定より伸び悩むスーパーも

各地で新米の販売が進むなか、千葉県のスーパーでは、新米の販売が想定より伸び悩んでいて、店では今後の需要の動向も見極めた上で、価格の見直しなども検討したいとしています。
千葉県柏市にあるスーパーでは今月16日から新米の千葉県産の「ふさおとめ」を、25日からは茨城県産の「あきたこまち」の販売を始めました。
価格はいずれも5キロあたり税込み4298円です。
ただ新米の売れ行きはこれまでのところ店の想定よりも伸び悩んでいるということです。
店では、新米の販売価格が去年よりも高くなっていることや、備蓄米の流通が進むなどして消費者の選択肢が増えたことが背景にあるのではないかとと見ています。
スーパーを運営する会社の池田宗幸さん

「新米の売れ行きは思ったよりもよくないです。新米を優先して買うお客様が多い時期ですが、備蓄米もあるためその時期が少しずれているのかも知れません。数年前の価格に戻すのは難しいですが、今の状況の中ではもう少し価格を下げたほうがいいのかなとも思います」
随意契約の備蓄米を引き続き販売するスーパーも
コメの価格が高止まりする中、兵庫県加古川市のスーパーは、消費者が安くコメを買える選択肢を残そうと、随意契約の備蓄米を引き続き販売することを決めました。
加古川市のスーパーでは、ことし6月から随意契約の備蓄米を5キロ税込み2100円余りで販売しています。
入荷するとすぐに売れるということで、25日は品切れになっていました。
一方、今月中旬からはことしの新米の販売も始めましたが、販売価格は5キロで税込み5000円程度と備蓄米の2倍以上となっています。
備蓄米の販売期限が延長されたことを受けて、店は消費者が安く買える選択肢を残そうと、令和3年産の備蓄米940トンを引き続き販売することを決め、政府に申請しました。
ただ、店によりますと、備蓄米はこれまで政府の倉庫からの出荷に時間がかかっていて、今後の出荷も具体的なスケジュールが示されておらず、販売の見通しは立っていないということです。
2人の子どもを連れた30代の母親は「新米の値段を見ましたが、高いなと思いました。この値段なら備蓄米を買いたいと思うし、引き続き販売してくれるのはうれしいです」と話していました。
小中隆弘副店長

「お客さんから『次の備蓄米はいつ店に出るのか』と聞かれることは依然として多く、備蓄米の需要はまだ大きいと感じます。このニーズに応えるためにも、政府には早く出荷の見通しを示してもらいたい」
厳しい暑さが新米に影響

厳しい暑さが続く中、茨城県稲敷市の農業法人では8月から新米の収穫が始まっていますが、コメが白く濁るなどして「1等米」の比率が下がる影響がすでに出ています。
茨城県内でも有数のコメの産地、稲敷市にある農業法人ではあわせて50ヘクタールほどの田んぼで「コシヒカリ」など8種類のコメを栽培していて、このうち「あきたこまち」など、一部の品種の収穫が今月から始まっています。
25日は、前日収穫したばかりのコメのもみ殻を取り除き、機械を使って色や大きさを選別する作業が行われていました。
農業法人によりますと、ことしは、連日の厳しい暑さの影響で、米粒が白く濁る高温障害が出ていて、見た目の評価がもっとも高いとされる「1等米」の比率は現時点でおよそ80%と、去年より15ポイントほど下回っているということです。
一方、この法人が取り引きしている農協や民間の卸売業者の買い取り価格は60キロあたり3万2000円前後と、去年より30%ほど高くなっているということです。
今後、県内でも最も収量の多いコシヒカリの収穫が本格化しますが、農業法人では、コシヒカリは暑さに弱いため収量などに影響が出て、新米の価格が高い水準で推移するのではないかと見ています。
「きうち農産」の木内康博社長は「早く1等米のコメを確保したいという声も多く、等級の比率が下がれば相場は上がると思います。ことしは夏の暑さが強いので、これから収穫するコシヒカリの品質が下がることを心配しています」と話していました。
専門家に聞く 備蓄米の販売価格への影響は?

コメの流通に詳しい東北大学大学院農学研究科の冬木勝仁教授は、9月以降も随意契約による備蓄米の販売が認められたことによる販売価格への影響について「備蓄米を買う人はもちろんいるが、銘柄米やブレンド米を買う人もいて、9月以降に備蓄米の販売が延長されても別のカテゴリーの商品が並んで置いてある形になり限定的な影響だと思う。多少高くても、新米が出れば消費者が新米にいくのは日本の食習慣の特徴だ」と話しています。
ことしの新米の価格の見通しは?
「早場米の価格と品質、JAグループが発表している概算金の水準を見ると、新米の出だしはどうしても高くなってしまう。5キロあたり税込みで4000円台前半くらいではないか」
猛暑などの天候の影響は?
「生育の初期段階で暑くなってそのままの高温が続くのはイネにとってはあまりよくない。米粒の品質が低下すると、見た目ではとれているのに実際精米したときに出荷できなくなる。そうなると、価格は上がる方向になってしまうのではないかと思う」
小泉農林水産大臣「新米の価格の動向よく見て 必要な対応を」

今後、流通が本格化することしの新米の価格について小泉農林水産大臣は25日、鹿児島県内で記者団に対し「新米の価格の動向をよく見て、必要な対応を進めていきたい。ただ、ポイントは、生産者、消費者双方の理解と距離感、これをどうやって1つにしていけるのか、こういった観点からもよく見ていく必要ある」と述べました。
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