JR九州の来春のダイヤ改正で減便が決まった、博多(福岡市)と肥前鹿島(佐賀県鹿島市)を結ぶ特急「かささぎ」。九州新幹線長崎ルート(西九州新幹線)の開業後3年間は本数を維持すると地元と合意していたJR九州は、期限が過ぎると地元の理解を得ることなく減便を独断した。新幹線の未整備区間を巡る議論に動きがようやく出始める中、佐賀県の「県鳥」を冠した特急の減便は地元に不信の輪を広げている。
「ダイヤを決めるのはJR。私たちはそのことをしっかりと教訓としなければならない」。11日、佐賀県庁を訪れたJR九州の担当者から減便の最終案を示された、寺田博文・県地域交流部長は報道陣を前に不信感をあらわにした。
「かささぎ」は西九州新幹線が開業した2022年9月に運行を開始した。開業で長崎線の江北(佐賀県)―諫早(長崎県)間は並行在来線となり、博多と長崎を肥前鹿島経由で結ぶ特急「かもめ」が廃止に。代わりに、肥前鹿島を発着する特急として誕生したのが「かささぎ」だった。
開業に先立ち、JR九州や佐賀県などは16年、かささぎの上下14本の運行本数を、新幹線開業から3年間は維持すると合意。しかし、佐賀県内の新鳥栖―武雄温泉間で導入が検討されていた、新幹線から在来線に乗り入れできるフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)について国が開発を断念し、この区間の整備方式は白紙となった。
新幹線整備を巡る状況の変化で、県は「3年経過したから(かささぎを)減便してもいいとはならないと繰り返し話してきた」(寺田氏)。国土交通省の水嶋智事務次官が未整備区間の佐賀県の負担軽減について検討する意向を表明するなど、議論が進み始めてきた中での減便に寺田氏は「約束していてもこうなるということは、教訓にしていかなければ」と言い切った。
肥前鹿島は新幹線開業で停車する特急が上下45本から14本に激減していたが、ダイヤ改正で更に4本減る。鹿島市が「スローツーリズム」を掲げて肥前鹿島駅の再整備などを進めている中での減便に、松尾勝利市長は11日、報道陣に「減便はイメージダウンにつながる。鹿島の魅力を発信し、来てもらう仕掛けをしていく必要がある」と語った。【成松秋穂】
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