仕事と育児の両立支援策は、「3歳まで」「小学校低学年まで」といった幼い子どもを持つ親を対象にした制度が多い。
だが、小学校高学年以上になると、子どもの友人関係や学習面、反抗期など、親は違った悩みを抱えるようになる。
10歳以降の子どもを育てながら働く親には、どんな支援が必要なのだろうか。
「従業員と子どもとの関係性」に着目
「幼児のいる従業員が子どもとの時間を持てず、『今のまま子どもが中学生になったら父親の自分は無視されてしまう』と悩んだ末、転職した」
「世代によって働き方の満足度が違い、そのギャップを埋めづらく、双方が仕方ないと考えている」
シンクタンクの日本総合研究所は、企業の担当者との意見交換をした際、上がってきた声などをきっかけに、「従業員と子どもとの関係性」に着目。親の生活満足度に関する調査を行った。
2025年8月、週の平均労働時間が20時間以上の会社員らを対象にインターネット調査を実施。有効回答者9404人のうち、10~18歳の子どもがいる4691人の回答を分析した。
分析対象者は87・4%が男性で、12・6%が女性となった。平均年齢は51・9歳。就業状況は会社員が59・0%と最多で、会社役員・管理職22・1%、公務員・団体職員15・5%、派遣・契約社員3・3%――だった。
調査の結果、働く親の生活満足度に寄与していると考えられる項目が二つあった。
一つは「子どもとのだんらん」だ。
「仕事のある平均的な1日に、30分以上、子どもとだんらんすること」が「よくある」と回答した人は、生活満足度が10点満点だと回答した人のうち47・2%を占めた。
一方、生活満足度が0点の人は13・6%に過ぎなかった。
もう一つは「子どもからの親の仕事への評価」だ。
「子どもはあなたの仕事をどう思っていますか」と尋ねた設問では、「いい仕事だと思っている」と回答した人は、生活満足度が満点と回答した人の47・2%を占めた。
一方で生活満足度が0点と回答した人では、わずか2・5%にとどまった。
子どもとの団らんの時間を確保している人や、子どもが自分の仕事を評価してくれていると感じている人ほど、生活満足度が高い傾向が表れた。
日本総研創発戦略センターチーフスペシャリストの村上芽(めぐむ)さんは、調査結果を踏まえ、社員が朝や夜に子どもと話せる時間を確保できる在宅勤務やフレックス制などの勤務体系の導入とそれらを選択しやすい環境整備に加え、中高生が親の仕事の理解を深められる「職場見学」や「ファミリーデー」などのイベントを開催することを提案する。
子と関わりながら満足して働ける環境を
長時間労働の影響はどうだろうか。
「子どもはあなたの働く時間についてどのように考えていますか」との設問で、「長すぎると思っている」「長いと思っている」を合わせた回答は、生活満足度を0点と回答した人で計27・1%だった一方で、生活満足度が満点だった人も計24・8%となり、親が考える「働く時間の長さへの子どもの評価」と生活満足度の間には、特徴的な傾向は見られなかった。
村上さんは「だからといって長時間労働がよしとされるわけではありません」とした上で「企業は勤務時間を短縮するだけでなく、親である従業員が子どもと関わりを持ちながら、自分の仕事観で満足して働ける環境を整備する必要があります。そのためには、幼い子どもの親だけにとどまらず、いろんな人の状況を見渡して施策を検討する必要があります」と話している。【御園生枝里】
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