@crysrenae / TikTok
<娘は「精神病棟に入れてくれ」と懇願したことも。少女を豹変させた病はなんだったのか──>
9歳のラシーは活発で明るい少女だった。だがある晩を境に、彼女はまるで別人のようになった。
【動画】9歳の娘が「一晩で別人に」...取り憑かれたように「豹変」した少女を母親が撮影して話題に
母親のクリスタル(30歳、イリノイ州在住)は、昨年を振り返り「地獄だった」と本誌に語っている。医師たちは、ラシーに不安障害と抑うつ症状があると診断したが、クリスタルの直感は「何かが違う」と訴えていた。
最近クリスタルは、自身のTikTokアカウント(@crysrenae)に動画を投稿した。動画には、9歳の誕生日にスイカのくし切りケーキの前に座るラシーの姿が映っている。弟が無邪気に喜ぶ横で、彼女は無表情のままだ。
続く場面では、1年後、ケーキの前で満面の笑みを浮かべるラシーが映し出される。この劇的な変化は多くの共感を呼び、再生回数は4000万回近くに達している。
ラシーが「一晩で豹変した」理由
最初の兆候は、ラシーが食中毒を起こした直後に現れたと、クリスタルは本誌の取材に語った。
彼女は嘔吐への強い恐怖を抱くようになり、母親から離れることを極端に嫌がる「分離不安」の症状が出はじめた。また、それまで夢中だったおもちゃやテレビ番組にも興味を示さなくなった。
「彼女の心はどこかに行ってしまったようだった」
その後、7月に入ると症状は一気に悪化した。
「精神病に近い状態になりかけた。ある夜、現実感を失ったようになり、真夜中に私のドアを叩いて『病院に行かなきゃいけない』と言い出した。理由は分からずとも、何かが起きていることは本人にも分かっていた」
「それからは恐怖に襲われる発作を何度も繰り返した。本当に異常な状態だった。ラシーは恐怖に支配されていた」
ラシーは複数の医師の診察を受け、そのたびに不安障害や抑うつ状態と診断された。しかしクリスタルには、もっと深刻で、はるかに恐ろしいものに見えたと語る。
「こんな言い方は辛いけれど、何かに取り憑かれたようだった」
やがてラシーは自殺をほのめかすようになり、寝室を何度も壊し、窓ガラスを割ったこともあった。8月には、精神科病棟に入院させてほしいと懇願するまでに至った。
精神科医たちも、何が起きているのかをうまく説明できずにいたという。打つ手がないと感じた家族は、自分たちで情報を集め始め、そこで「PANS」に行き着いた。
ラシーの回復のきっかけは、正しい診断と治療を受けたことだったという。現在クリスタルは、自身の経験をもとに小児突発性神経精神症候群(PANS)について広く知ってもらおうと発信を続けている。
PANSとは、強迫性障害や極端な食事制限が突然現れ、同時に急激な行動の変化が見られる病で、感染症との関連が指摘されているが、明確な引き金が特定されないケースも多い。
PANDAS医師ネットワーク(PPN)によると、PANSの一種で、同じく突然発症する小児自己免疫性神経精神障害(PANDAS)は、連鎖球菌への感染との関連性が示されており、チック(突発的な動作や発声)や神経学的な変化を伴うことがある。
どんな症状が出る?
PANSやPANDASを発症した子供は、強迫的な行動や極端な食事制限といった症状が突然現れるだけではない。同時に2つ以上の深刻な症状が急激に現れるのが特徴だ。
主な症状としては以下のようなものがある:
・強い不安感
・気分の浮き沈みや抑うつ状態
・怒りっぽさや攻撃的な言動
・行動の退行(幼児のような振る舞いに戻る)
・学力の急激な低下
・運動機能や感覚の異常
・睡眠障害などの身体的な不調
ラシーは、これらすべての症状に苦しんでいた。クリスタルは、娘が突然「怒りっぽくなった」と語っている。
PPNは、複数の感染症への同時曝露が免疫系に誤作動を引き起こし、こうした症状が出ると考えている。通常であれば働くはずの防御機構がうまく機能せず、免疫細胞が誤って健康な組織を攻撃してしまう。あるいは、免疫反応が過剰に活性化し、神経細胞を標的にしてしまうケースもあるという。
さらに、こうした異常な免疫反応を起こしやすい遺伝的な要因を持つ子供も一定数いると考えられている。
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