千葉県立農業大学校(東金市)の清水敏夫准教授(54)は研究の一環で学生たちと、水田を荒らす外来種「ジャンボタニシ」を農薬を使わずに駆除し、絶滅危惧種を保護する活動に取り組んできた。そこで取れた減農薬米のブランド化も提案。清水准教授に研究の目的や意義を聞いた。【高橋秀郎】
――研究のきっかけを教えてください。
◆ジャンボタニシは田んぼの若い稲を食い荒らします。繁殖力が強く、県内30を超える市町村で被害が確認されています。困り果てた農家から退治方法を相談されました。「米作りはお金も手間もかかるのに、収穫量が減ったら赤字。いっそ、やめてしまいたい」という声も聞きました。
農薬を使えば駆除できますが、使い続ければ他の生物にも悪影響を与えます。消費者は使ってほしくないし、農家も控えたい。2020年度から学生と研究を始めました。
――現地で絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオを発見しましたね。
◆市内の農業用水路で見つけ、驚きました。トウキョウサンショウウオの産卵などは農業の営みと結びついています。米作りをやめると、水路に水がなくなって生息できなくなる。農薬をなるべく使わないことも大切です。
トウキョウサンショウウオが生息できる豊かな環境で育てた米なら、高く売れて、農家は稲作を続ける意欲が高まるはず。売り上げの一部はトウキョウサンショウウオの保護活動に役立てたい。値段を少し高くして、消費者の理解を得て参加してもらうシステムを作りたいと考えました。
――まずジャンボタニシを駆除する道具づくりに着手しましたね。
◆ジャンボタニシだけを捕らえる落とし穴(トラップ)を考えました。あまりお金がかからず、設置は簡単で、捕まえたジャンボタニシは逃げられない構造にしたい。獣に壊されない丈夫さも必要です。
そこで、プラスチック製容器の上面に返しのついた穴を開け、えさを入れて田んぼに埋め、ジャンボタニシを誘い込み、酸欠状態にして死なせる仕組みにしました。特許を取得しています。
――22年度から実際に農家が使い始めました。
◆初めて収穫した米は「トウキョウサンショウウオ米」と名付け、秋の学園祭「社稷(しゃしょく)祭」に出すとすぐに売り切れました。23年度から本格的に栽培し、船橋市の米穀店の協力も得ました。東金市のふるさと納税の返礼品となり、特産品としての実績も作りました。
注文が増え、消費者の支持を得てきたように思います。トラップは改良を重ねて26年度の田植えに向けて販売する計画です。多くの農家が減農薬栽培に取り組んでくれることを期待しています。
清水敏夫(しみず・としお)
1971年、山武市生まれ。県立成田西陵高教諭などを経て2018年から現職。病害虫専攻教室を担当し、病害虫の生態や防除対策を研究する。ジャンボタニシ駆除などの取り組みは、9月に出版された「ジャンボタニシに負けるな! 新たな米づくりへの挑戦」(あかね書房)で紹介されている。
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