Anilsharma26-pixabay
<ブリッジを制する者が、健康を制する。ブリッジという処方箋について>
日本でも定着した「自重トレーニング」。そのきっかけは、2017年に邦訳版が刊行された『プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』(CEメディアハウス)だった...。
元囚人でキャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドが語る、筋肉について。第9章「ザ・ブリッジ/The Bridge」より一部編集・抜粋。
◇ ◇ ◇
ブリッジの効能
腰痛──。アスリートを悩ますこのトラブルにはシンプルな解決法がある。それも究極の解決法だ。それが、ブリッジをかけることだ。
ブリッジは四肢を使って床面を押し、背中を持ち上げてアーチをかける簡単な技術だ。これを定期的にやれば、酷使してきた背中の問題を解消することができる。
そして、ブリッジという処方箋を、いま以上、必要としている時代はないだろう。人類の脊柱が不幸な状態にあるからだ。
立ち上がって生きるようになったことはわたしたちに最高の変化をもたらしたが、一方で、最悪の変化ももたらした。4本の脚を使って歩く動物の脊柱は梁のようなものであり、体重が四点に分散される。
また、彼らは頻繁に背を反らすので、めったに脊柱の問題に苦しまない。2本脚で歩くようになった人類の脊柱は「柱」に変わり、体重が分散されるのも2点に減った。
そのため、垂直方向への負荷が増して背骨に大きなストレスがかかるようになっている。さらに、平均的な現代人は、脊柱をあまり使わないだけでなく、間違った使い方をしている。
コンピュータスクリーンの前で、あるいは机に向かって前屈みになって一日を過ごし、家に帰ったら帰ったで、ソファーに寝そべってテレビを観る。
脊柱を誤整列させる恐ろしい姿勢を、一日中、そして、毎日、繰り返すのだ。その結果、30歳代になると、多くの人の椎間板が退化し始め、背骨の問題に苦しむようになる。
週にたった一度のブリッジが、これらのトラブルを回避・改善させる。正しい位置に椎骨を再整列させ、正しい姿勢でいるために欠かせない背中の深層筋を強くするからだ。
ブリッジを練習していると骨も強くなる。背中の椎間板は軟骨でできており、ほかの軟骨と同じように血流がとても少ない。
そのため、滑液と呼ばれる関節内の液体が椎間板に栄養を運んでいる。血液と違って滑液は循環しない。関節が動作する時だけ、新鮮な滑液が関節に到達する仕組みになっているからだ。ブリッジをかけると、この滑液の循環が起こる。
椎間板から老廃物が取り除かれ、そこに、栄養価が高い滑液が大量に送り込まれる。その結果、傷んだ椎間板を治癒・回復させ、退化を防ぐ。椎間板ヘルニアなどになるリスクも減るので、健康的な脊柱を将来にわたって確保することになる。
ブリッジは脊椎筋にとって究極の運動でもあるので、すべての動作が力強いものになる。
ブリッジ・シリーズのマスターは、脊柱の両側を走る2匹のニシキヘビのような脊柱起立筋によって識別されるが、ブリッジによって発達するのは脊柱起立筋だけではない。ほかにもたくさんの筋肉を開発する。
ブリッジ・ホールドした時の姿勢を見てみよう。
まず、床面から体を押し上げる時に腕と脚を使う。そのプロセスの中で、肩帯と上背部が動作する。(男性アスリートだと、普通は、頑固なほどこわばっている)体の正面全体が伸び、膝、大腿四頭筋、股関節屈筋、腹部および胸部に大きな負荷がかかる。
体を後ろに反らせる動作が、肩に溜まったカルシウム沈着物を除去し、体幹をしなやかなものにする。胸郭が拡張されるので、ブリッジ実践者の多くは肺の容量が増える感覚を覚えるのだが、実際そうであると思う。
ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

『プリズナートレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田 雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
【関連記事】
最強の筋トレは「ブリッジ」だった...健康寿命を左右する「背骨の守り方」とは?
下半身は「ふくらはぎ」で決まる...最強の脚をつくる「見逃され筋」の真実とは?
なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。