写真はイメージ=ゲッティ

 米科学振興協会が発行する脳科学分野の専門誌「サイエンス・シグナリング」は24日、2017年5月に公開した米ミネソタ大の神経科学者らによるアルツハイマー病に関連する論文を撤回したと発表した。論文に掲載していた画像が不適切に操作され、研究データが正確に反映されていないことが判明した。

 脳内で異常なたんぱく質「アミロイドベータ(Aβ)」が神経細胞の周辺に複数集まって「オリゴマー」になると、神経への毒性が強まり、細胞が死滅する。これによって認知症患者の約7割を占めるアルツハイマー病を発症するとされている。

 この論文では、10個ほどのAβが集まったオリゴマーの一種をマウスや培養細胞に入れると、神経伝達の働きに特徴的な変化を引き起こすとの内容をまとめていた。

 同誌は22年6月にデータ操作の疑義を把握。25年1月にミネソタ大から、論文中の培養細胞とオリゴマーが結合していることを示す画像に不適切な操作が施された恐れがあるとの報告を受けた。

 同誌の調査の結果、研究データが正確に反映されていないことが明確になり、論文を撤回した。責任著者のミネソタ大のシルバン・レスネ博士は撤回に反対したという。

 レスネ氏のオリゴマー研究を巡っては、22年7月の米科学誌サイエンスに計10本程度の論文で改ざんの疑いがあるとの記事が掲載された。今回、撤回となった論文も関連している可能性がある。【渡辺諒】

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